2008年8月28日木曜日

ヒラリーに身震い

デンバーで開催中の民主党党大会。CNNで連日生中継しており昨夜も見ていたのだが、ヒラリー・クリントンの演説は物凄かった!もう物凄いとしかいいようのない神懸かり的な話術。オバマの演説を高く評価する人も多いが、私は彼女のパフォーマンスは天下一品だと思う。田中眞紀子なんか足下にも及ばない。

まず大変聞き取りやすい張りのある声で、シンプルな単語を繰り返し繰り返し使いながら主旨を明快に届けることに非常に長けている。これまでのオバマ批判はどこへやら、彼こそ大統領としてふさわしい。ブッシュがこの国にもたらした悲劇を繰り返してはいけない。今こそアメリカ国民は一致団結して立ち上がり民主党に政権を取らせるべきだと拳を突き上げて鼓舞力説。

そして挿入される「You」「Your children」「America」の多いこと多いこと。「あなた」が作る、あなたの子供、またそのまた子供のための「アメリカ」の未来を決めるための大統領選という強調(というか洗脳)。そのたびにどっと歓声をあげ立ち上がり熱狂的な拍手を送る観客たち。アメリカは建国の歴史からして自然発生的なものではなく「人」が立ち上げた意志の国。私とあなたとで未来を作り上げていきましょうというメッセージが、彼らの国民としての誇りに火をつけ燃え広がっていく様子が、はためく星条旗を透かして見えるようだった。

さらにすごいのが演説後の彼女。舞台を上手から下手、下手から上手へ行ったり来たりしながら満面の笑みで会場を見渡し、目のあった観客を次々に指差しさらに力強く歯を見せて笑う。「そうそこのあなた、私はあなたに語りかけているの!ええ、あなたなの。伝わったでしょう私のメッセージ」という強烈なアピール。個人的に繋がっているという幻想を抱かせ、盲目的に崇拝させる。うまいなあ。怖いくらいうまい。

と今日会った友人に話したら、夫のビル・クリントンもそっくりな話し方をして、彼の演説に多くのアメリカ人が魅了されたんだよって。
「最初彼は人差し指で観客を指し示しながら話していたんだけど、それはちょっとメッセージ性が強すぎるというアドバイスを受け、握り拳をつくり人差し指を曲げて関節の辺りで観客を指しながら話すようにしたんだ。ヒラリーもまったく同じように話すから、彼のやり方を学んだんだね」
ほう、と思い再度ビデオで確認したところ、確かに演説中は握り拳&人差し指第二関節方式を導入していたことが判明。

だが、だがである。私はあくまで日本人でこの選挙への投票権はない。いまいるこの国の景気や教育問題、テロへの恐怖、健康保険の問題が改善して欲しいと心底思うし、さらにそれが世界経済にも直接的に響いてしまう大国なのでバランスを保って賢明な政治経済の舵取りをして欲しいとは思う。思うものの、外部に敵を作り、諸外国との覇権争いを劇的に演じることによって国民の目を外に向け彼らの一体感を取り戻す作戦に出た場合、いつ日本だってこういった素晴らしい演説の中で悪者扱いされるか分かったものではない。「No McCain! No more Republican!」の代わりにこの調子で「No Japan」と言われたらと思うと身震いがしてきた。まあ過去にも言っていたんだろうし。大統領選という祭りが去った後、きれいごとばかり並べる両候補の将来、この国、この国の影響を受ける世界はどうなるのだろう。

オバマの演説は党大会最終日の明日28日(木)夜。ヒラリーの存在感につぶされない歴史的なスピーチになるのか。アメリカだけでなく世界に目を向けた話を聞ければ多少安心できるのだが。選挙中は無理かな・・・。

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