2008年10月27日月曜日

Sudoku National Championship


10月25日(土)にフィラデルフィアのコンベンション・センターで開催された「Sudoku National Championship」には、アメリカ全土から 700人以上の挑戦者が参加した。

3個×3個のブロックに区切られた 9個×9個の正方形の枠内に1〜9までの数字を入れるペンシルパズル「数独」。本国より先に海外で人気に火がついた「数独」は「SUDOKU」の名前で親しまれ、書店にはずらりと専門誌が並び愛好者も年々増えている。

今回の大会は初級者、中級者、上級者などのレベル別に、賞金は100ドルから10000ドル。 10000ドルの賞金を獲得した優勝者は、「Wei-Hwa Huang 」というカリフォルニア出身の33歳のソフトウェア・エンジニア。世界パズル選手権で4回優勝したことでも知られる彼は、今年の夏までGoogleの社員で仕事上でもパズル作成プロジェクトを手がけていた。今後アメリカ代表チームに参加し、2009年にスロバキアで開催される 「第4回 World Sudoku Championship 」へ出場することになっている。

また開会式には「数独」の名付け親である株式会社ニコリ代表取締役社長・鍜治真起氏も駆けつけ、地元MLBチームで現在ワールドシリーズで優勝争い中のフィラデルフィア・フィリーズのキャップを被り登場。自身初めてという英語でのスピーチを披露した。「数字は独身に限る(1桁の数字しか使えない)」を短縮したのが「数独」の名前の由来だと語り、またそれは自身が既婚者であった事への後悔の念からではないとの冗談を交えた話で、会場を埋め尽くしたファンから割れんばかりの拍手喝采を浴びていた。

2008年10月23日木曜日

アレックスとの出会い

昨日は終日、フィラデルフィア日米協会主催の「フィラデルフィアージャパン健康科学ダイアローグ」のボランティアとして働きました。米国の製薬会社がメインのスポンサーとなった学会で、テーマは『ワクチンー新たなる進路』。「ワクチン」は英語で言うと「Vaccine」。発音は「ヴァクシーン」(爆進??)となるので、最初に聞いた時はかなり驚きました。それも「ヴァ」にかなりのアクセントを置くので。

午前7時に会場集合。学会の受付・案内。質疑応答タイムにはマイクを持って走り回り、さっぱり分からないまま「ヴァクシーン」について耳を傾ける。日本からもゲストスピーカーが3人。パネル発表の方等も入れると20人くらいいらっしゃいました。大学の研究室や製薬会社、厚生省、インディペンデントの研究者から、ジャーナリストまで。

全てお開きになったあと、参加者やスタッフらで打ち上げパーティーへ。そこに後から登場したのがアレックス。彼は感染症や癌に効果のあるワクチンを開発するバイオ会社の創設者兼CEO。ルチアーノ・パヴァロッティを思わせる風貌と恰幅の良さ。ヨーロッパ系の訛のある英語でユーモアたっぷりに話す彼は、学会中から異彩を放っており、他の研究者が一目を置いているのも伝わってきます。門外漢の私にとって学会は時として意識が飛びそうなほど退屈な時間でしたが、彼の発表の時だけ(内容が分からないにも関わらず)まるでコメディーを見ているような面白さでした。どうやったら人の興味を引き付けられるか、よく分かっているのですね。

パーティーで話すうちに意気投合。見ているだけで吹き出してしまいそうなウインク猛攻撃にあい、そして

「まだ君と話したい。家まで送るからどこかのバーへ行こう。それが無理なら明日の昼にニューヨークで会議があるのだが、その時間を遅らせるから一緒に朝ご飯でも食べたい」と誘われ、一晩明けると面倒なのでそのまま我が家の正面のバーで、なんとも健全なことに2人ともホットティーを飲みながら語り合いました。

そして、ひょうきんな表情に隠された彼の人生は凄まじいものがありました。ソ連出身のユダヤ人。15歳から分子科学に興味を持ち研究室で働く。大学も卒業。だが彼は当時のソ連を覆っていたコミュニズムを心から憎んでおり、とうとうソ連崩壊のその年に24歳でパリへ逃げ出す。しかし生きていくあてはなにもなくホームレスに。冷たいベンチで夜を過ごす日々。

「そこで『ピーン』と来たんだよ。俺は高い教育を受けてここまで生きてきたが、今の俺はそこにいる他のホームレスと何も変わらじゃないか!」
その後ユダヤ人のとある組織に拾われイスラエルへ。

「そこで温かいシャワーを浴びて、きれいなシーツの敷かれたベッドに寝たときが、人生で一番幸せだったんだよ。そのあと俺は会社を作り成功していくけれど、あのときの幸せは今よりもずっとずっと大きかったんだ。もうホームレスに戻らなくって良いんだってね。幸せなんてお金を設けることじゃないんだよ。俺にとって、本当の幸せを感じられたのはその一瞬だけだった。温かいシャワーと、きれいなシーツのベッド」

そしてその後アメリカに渡り、ハーバード大学で学び、ボストンでバイオベンチャーを起業。デンマークの大学のライフサイエンス学の教授でもあり、ビジネス本を執筆する作家でもある。今の国籍はアメリカ人。

彼の人生から始まった会話はその後多方面に広がり、お互いの家族の話、ジャン・ジャック・ルソーからミース・ファンデルローエ。ウィリアム・ペンからユダヤ教、日米の文化や国民性の比較、アメリカと「自由」について、大統領選、そして昨今の不況、と気がついたら午前1時になってしまい、そこで終了することにしました。「明日車でニューヨークシティへ行くけど、一緒に行くかい」と誘われましたが、さすがにそれはお断りして、また連絡を取り合いましょうと約束。君に会えて良かったと非常に紳士的に握手をして帰っていきました。

もう少し彼がハンサムでお互い独身だったら恋にでも落ちたのでしょうが、でも逆にそうじゃなかったから面白い会話ができた。フィラデルフィアの小さなバーで、ティーバッグを放り込んだだけのホットティーを啜った夜は、たぶん一生忘れないでしょう。

2008年10月17日金曜日

Go Phillies!!


昨夜、フィラデルフィア・フィリーズはロサンゼルス・ドジャースを5−1で下し、1993年以来15年ぶりにナショナル・リーグで優勝しワールドシリーズへの切符を手にしました!その瞬間から街は大騒ぎになり、クラクションと奇声に溢れ、上半身裸で走り回る男性たちなど狂乱の渦に。暴徒化すると怖いので外には出ずにテレビで見ていただけですが、実況と外からの音だけで十分参加している気分でした。関西に住んだ事がないので分からないのですが、阪神が優勝したらこんな感じではないかというめちゃめちゃぶりで、夜中の3時近くまでお祭り騒ぎは続きました。

先に4勝した方がワールドシリーズに行けるのですが、すでにフィラデルフィアで2勝、ロスでも1勝1敗で、昨夜優勝を持ち越してもホームに戻ってきたら赤い応援団が意地でも15年間のフラストレーションを晴らそうと待ち構えていたでしょうから、さほど心配はしていなかったのですが、やはりゲームがスタートすると見てしまいますね。

実はオバマとマケインの最後のディベートと時間帯が重なっていたのですが、そちらのことはすっかり忘れておりました。ごめんねオバマ。応援しているんだけどね。でも多分、フィラデルフィアでディベートを真面目に見ていた人の方が少なかったと思うよ。

面白いのが実況を見ていて、アメリカって大きな国だなあと実感することですね。ロスとフィラデルフィアでは時差が3時間。試合開始がこちらが夜の8時でもう真っ暗なのに、ロスは5時。まだ明るくって夕日がきれいなのが同じ国にいるとは思えない感覚。

ゲームは相手のエラーが相次ぎ、面白いように点が入っていきます。基本的にホームグラウンドには地元ファンしかいません。チームカラーの青に染まったスタジアムが徐々に悲観的なムードになりながらも、たった1点を返しただけで割れんばかりの拍手喝采になるのが痛々しかった。

でも明日は我が身ですからね。アメリカン・リーグの方はタンパベイ・レイズが松坂のいるボストン・レッドソックスを3−1でリードしており(それも4戦目は13−4で圧勝)王手をかけています。このレイズが強くて強くて、フィリーズがこのまま優勝できるかには不安が…。フィリーズがワールドシリーズに出場するのは1993年以来ですが、その時はトロント・ブルージェイズに4-1で負けています。優勝したのは1980年の一回こっきり。もし優勝すれば28年ぶり!!!WOW!

そして、フィラデルフィアの中央にある市庁舎の頂上から街を見下ろすウィリアム・ペンの銅像に、フィリーズのキャップを被せることになっているんですよ。もう巨大なキャップをニュースで見たので、このままワールドシリーズで勝とうが負けようが被せてしまうにちがいありません。それって中日が優勝したら金の鯱にドラゴンズのキャップを被せるような感覚ですよね。多分尾っぽの方になるのでしょうが。うーん、早く見たい。ちなみに今日確認しにいったところまだ被っていませんでした。

2008年10月16日木曜日

ハロウィンと暗黒舞踏




最近仲良しのCとのチャット。

C「ねえ、雅子はハロウィンの予定はなにかあるの?」

私「25日に友人たちを家に招く事にしちゃったけど、でも31日のハロウィン当日には予定はないんだよね。Cは?」

C「僕も予定なし。だいたい生まれてこのかたハロウィンパーティーに出た事がないんだよ」

私「本当に?アメリカ人ってみんなハロウィンの時期にはパーティーするんだって思っていたよ」

C「普通するんだよ。ただ僕が"loser"(負け犬)なだけさ」

私「いやいや」(そんな事言ってるけどこの人、シャイなだけで結構イケメンなんですよ。かわいい彼女だっているし)

C「ちょっと待って!そういえばこんなイベントがあったよ」

送られてきたホームページは「Butoh Dance: Curious Fish by Katsura Kan / Halloween Party」(初代暗黒舞踏の流れを汲み、白虎社にも所属していた舞踏家の桂勘(かつらかん)氏の振付け・演出によるパフォーマンスが繰り広げられるハロウィンパーティ。会場はスワスモア大学)。

タイトルの「Curious Fish」とは水俣病の水銀中毒に冒された魚、そしてそれを食べた猫や犬そして人間までもが死の舞踏(DEATH DANCE)を踊り続けたところからインスピレーションを得ており、亡くなった者たちへのレクイエムと、しかし決して希望は忘れてはいないという踊り、なんですって。

私「舞踏!?ハロウィンに?」

C「これクールだよね。」

私「えっ行くつもりなの?これテーマが水俣病だよ!」

C「うん、雅子は行かないの?」

私「ええと、行ってもいいけどほら、ハロウィンパーティだから仮装してくるようにって書いてあるよ。私コスチューム持っていないんだけど」

C「僕も持っていないけど作るつもりさ」

私「作るってどんなコスチュームを?」

C「いろいろ考えたけど最終的に『葡萄の房』(a bunch of grapes)になるつもりさ。僕はいつも『葡萄の房』になりたいと思っていたんだ!」

私「葡萄……?」
(この辺りが日本人のコスプレの意識と全く違うなあと思いますね。アニメや映画のキャラクターになりきるというのももちろんあるのですが、葡萄やリンゴバナナといった顔出しタイプの着ぐるみも人気があるようです。でもなぜ葡萄に??)

C「そう。風船を体にくっつけたら葡萄みたいになるかな」

私「ブドウでブトウに行くの?あっこれダジャレのつもりよ」

C「hahahaha」(そして会話は終わってしまいました)

アメリカ、ハロウィン、暗黒舞踏、テーマは水俣病、そこへ参加するアメリカ人は葡萄の格好。シュールもシュールもいいところですね。私、このパーティーに行くのかしら?そして何を着るのでしょう。

もしご興味あるようでしたら、イベントの案内はこちらからご覧ください。
http://jasgp.org/component/option,com_events/task,view_detail/agid,413/year,2008/month,10/day,31/Itemid,176/

2008年10月11日土曜日

Red October!



日本のプロ野球セ・リーグは巨人が阪神を下し優勝したとのことですが、こちらアメリカでは地元フィラデルフィア・フィリーズが、15年ぶりにナショナル・リーグ・チャンピオンシップに出場し、さらに昨夜ロサンゼルス・ドジャースとの初戦を制したため、多いに盛り上がっている最中です。

チームカラーの赤と映画のタイトルを引っかけ「レッド・オクトーバー」と名付け、連日市民の熱狂ぶりを伝える地元のテレビ局「FOX29」。確かにホームグラウンドのシチズンズ・バンク・パークは満員の観客で真っ赤に染まっていました。

面白いもので日本にいるときは野球に全く興味がなく、せっかく東京ドームのバックネット裏の席をいただいたのに試合中に爆睡するという失態を犯した私ですが、こちらでは選手の名前まで覚えるほどベースボールファンになってきました。人気選手はライアン・ハワード、チェイス・アトリー、ジミー・ロリンズ、パット・バレルあたり。私のお気に入りはちょっと潰れたような鼻がキュートな黒人選手ハワード。笑顔が素敵です。女性ファンが多いのはイケメンのアトリーのようですが。

日本人選手は田口壮外野手と、サンディエゴ・パドレスを解雇されて戻ってきた井口資仁二塁手がいます。井口選手の入団はプレイオフ出場選手登録期限後だったため今期は出場できませんが、田口選手は昨夜出ていましたね。

フィリーズの監督チャーリー・マニエルは、70年代後半から80年代初頭にかけて日本プロ野球のヤクルトスワローズと近鉄バッファローズにいたということを最近知りました。往年のファンの間では有名な話でしょうね。そして今朝勝利の喜びと同時に悲報が。彼の母親が亡くなったそうです。ご冥福をお祈りします

対するドジャースには斎藤隆投手がいますが、ナ・リーグ優勝決定シリーズの出場選手登録から外れたようです。残念。でもメジャーリーグで日本人選手を見るのはもうあまり珍しくなくなってきましたね。

さて、今夜の2戦目はどうなりますでしょうか?このまま勝ち進んでワールドシリーズで松坂大輔のいるボストン・レッドソックスと対戦するといいなあ、と願っています。そうなったらますます真っ赤な秋になることでしょう!

2008年10月10日金曜日

皇居のお堀事件

7日に皇居のお堀に全裸で飛び込んで泳いだイギリス人が逮捕、されなかったそうですね。精神状態がおかしいということで入院。

このニュースはCNNで昨夜見ました。そして目が点になったのが刺又(さすまた)というのでしょうか。先が割れた器具で彼を取り押さえようとしているへっぴり腰の警察官の姿。アメリカだったらすぐにピストルを出して「手を上げろ」、逃げた瞬間に射殺でおしまいではないかしら。散々逃げられて取り押さえるまでに時間がかかったようですね。裸に見えて口の中に爆発物を持っていて吐き出して投げつけられたらどうするんでしょう?危機意識の低さと、その後の対応の仕方に呆れてしまいました。こりゃ、平和ぼけと言われても仕方がないですね。

そしてFNNのサイトから日本で放送されたニュースを見てだんだんと怒りがわいてきました。まず街頭インタビューの一般人はなぜヘラヘラ笑っているのでしょう。笑い事ではないでしょう。テロかもしれないのに。テレビに出られて嬉しいな、というくらいにしか思っていないのでしょうか?

それと識者コメントでなぜデーブ・スペクターが出てくる!そして笑いを取ろうと「"皇居"と"公共"を間違えていたって言えば言い訳になりますね」と、くだらない冗談を言っているではありませんか。彼にコメントを求める必要は本当にあったのでしょう?日頃番組に起用している外国人タレントだからという、なあなあの理由で採用されたに違いありません。国籍も違うし、だいたい彼はシカゴ出身です。もしアメリカを代表して意見を言うのであれば、どんなに日本が危機意識のない、たるんだ国であるかビシッと指摘するチャンスだったのに。

フィラデルフィアではここ最近警察官が相次いで射殺され大問題になりました。それも犯人が8月に仮釈放されたばっかりだったため裁判所への非難が集中。テレビでは教会で執り行なわれたパット・マクドナルドの葬儀の模様をそのまま生中継し、物凄い人数の警察官が参列。マイケル・ナッター市長も挨拶していました。警察権力を誇示する狙いと思われます。

マクドナルドと共に現場にいて重傷を負ったものの命はとりとめた警察官リチャード・ボウズが10月1日。松葉杖をついて地元メジャーリーグチームのフィリーズの始球式に参加しました。きれいな弧を描いてキャッチャーミットに落ちたボールに満員の観衆はどよめき、惜しみない拍手を送ります。その後のインタビューでリチャードはこう言っていました。

"The real hero in this is Pat McDonald and I just want everyone to continue praying for Pat and his family so that they can get through this in their time of need,"

不覚にも目頭が熱くなりました。傷が癒えたら彼は再びハイウェイパトロールの仕事に戻るそうです。

2008年10月8日水曜日

政治的勧誘に遭うの巻

CNNの数時間に渡る経済ニュースを見て頭が痛くなったので、トレーダージョーへ買い物へ行く事にした。(暇だからではない。これも仕事の一環)今日は卵と牛乳は買わないと。アンチョビもあるといいなあ。

あれもこれも買ってしまいエコバッグをパンパンにさせて店を出ると、そこにはCNNでしつこいほど流れていた「Bailout」(アメリカ金融システムへの政治的救済策)に反対する横断幕を掲げたテーブルが。ポールソン財務長官は嘘つきだとも。うかつにもよろよろと近づいてしまった。

声をかけてきたのは2人いた方の、風にそよぐ産毛が顔中を覆う東欧系の顔立ちのおばさん。二重瞼を濃く塗りつぶし、さらに目の下までしっかり引いたアイラインが怖いよう。

「ラルーシュ(Lyndon H. LaRouche)って知っている?昨今の"Bailout"が如何に間違っているかを訴えているのよ。いまアメリカの経済はヒドい事になっているでしょう。ヨーロッパやアジアにも飛び火して世界的な大打撃よね」

(この辺りまでは理解できる。で、ラルーシュって誰?)

「世界的に有名な政治家で経済学者よ。昨日もテレビに出ていたの。ロシアの」

(ロ、ロシア??一気に怪しさ急上昇!)

「"Bailout"なんか間違っているの。悪いお金を金融機関に渡してはダメ。ヘルスケアシステムに回すとか、他にやるべきことがあるのよ」

(そのあとはとぎれとぎれにしか分からないし、なんかうさん臭い。よしアメリカ人じゃないからって逃げよう)

「あら、あなた中国人?」

(キタッ!!違うよー。日本人だよー。いつも間違えられるんだよねー)

「日本だってアメリカの経済の影響を受けているのよ!」

(知ってるよー。影響受けまくりだよー。株価どうしてくれるのさ。今年最安値でしょう)

「So, can you make a contribution?」

(キャン ユー メイク ア コントリビューション?? 二回くらい頭の中で繰り返してしまったじゃない。寄付をしろと?ラルーシュさんに?しませんよ。第一私はアメリカ人じゃないって言っているでしょう!)

「家にDVDプレーヤーは持っている?これを見たらラルーシュの考えがすぐに分かるわ」

(DVD1枚25ドルって書いてあるよ。ぼったくりだよね。事務所でコピーして作ったんでしょうどうせ。いやいや私英語よく分からないから見ないよ)

「まあいいわ。じゃあこのパンフレットだけでも持っていって」

(一応確認するけど、このパンフはタダよね)

パンフレットだけ受け取り、帰ってきてから興味本位でラルーシュ氏についてネットで調べる。ウィキペディアを読んだだけだが「陰謀説」(conspiracy theory)とか、「反ユダヤ主義」(anti-Semite)とか、「政治カルト」とか、「マルキシズム」とか引っかかる言葉が並んでいる。U.S. Labor Partyという党を運営(1972 - 1979)して大統領になろうとしていた過去も。もちろんウィキペディアだけでは評価できないけど、まあ現時点で主流派ではないことは間違いない。

でも気になるので友人にこんな人知ってる?有名な政治家なの?とメールで聞いたところ返事が速攻返ってきた。

Ha ha, Lyndon LaRouche is not a famous politician, he is a famous crackpot. That means he is crazy.

Well, maybe that is not fair of me to say. But he has no legitimate support or real political power. He is famous for creating conspiracy theories, and many TV shows or comedic political commentaries make jokes about him. Basically, no one with any real power takes him seriously at all.

なるほど。まあ一意見に過ぎないが、そこまで政治ネタを扱うコメディー番組(この手の番組はアメリカでは多い。でも難しすぎてついていけない)でちゃかされているなら、私の勘も間違っていなかったのだろう。

2008年10月6日月曜日

カレッジフットボール初観戦





土曜日の午後、ペンシルベニア大学の競技場フランクリンフィールドで行われてたカレッジフットボールに遭遇。時間があったのでペンシルベニア大学(Pennsylvania Quakers)VSダートマス大学の試合をしばし観戦。(ペンシルベニア大学関係者はIDカードを見せるだけで入れます)

観客は4割に満たないくらいで、ほとんどがペンシルベニア大学の応援団。ダートマス大学は、北部がカナダに接してるほど遠いニューハンプシャー州にあるので無理もないかしら。試合はちょうど第2クォーターと第3クォーターの間でブラスバンドのパフォーマンス中でした。

いままでテレビでもまともに観戦したことがなかったのでルールも見ながら覚え、全てが新鮮。オフェンスとディフェンスとでは選手が入れ替わるなんて知りませんでした。待機している選手は100人くらい?!

アメフトのルールは簡単に言うと攻守を交代しながらゲームを進行。基本的に得点する機会は攻撃側だけにあります。ゴールポストのあるエンドゾーンに向けて4回の攻撃のチャンスのうちに10ヤード進まないと先守交代。オフェンス側はなるべく前進しようとし、ディフェンス側はタックル等でそれを制止しようとする。1プレー10秒くらいで止まってしまい、また向かい合って仕切り直しの繰り返しで、サッカーやバスケットボールのように常にフィールド上を選手が走り回っているスポーツとはまるっきりイメージが異なりました。あの独特のアーモンド型のボールはキャッチしにくいようで、せっかくつかんでもすぐに落としてしまう。何とも言えず歯がゆい。華やかなタッチダウンのシーンは1回くらいしか見られませんでした。

スポーツに欠かせないのがチアリーダー。アメリカにはチアリーダーをテーマにした学園ものの映画も多く、女子学生の花形のイメージだったのですが、ペンシルベニア大学のチアリーダーたちは映画で見るようなセクシーな金髪美女はほとんどおらず、顔も体型ももう少しお平らな感じでした。チアダンスもバリエーションに乏しく、アクロバティックも安定感がなく頂上の人が落ちるんじゃないかと心配になるほど。まあそのくらいの方がほのぼのしていて良いですけどね。

第3クォーターと第4クォーターの間にトーストを観客が投げるのがここの名物。お酒が飲めないので乾杯(toast)の代わりに、パンの方を投げるとの事。宙を飛ぶトーストの雨にびっくり。あとから回収して動物たちのエサにすると聞きましたが本当かしら?

最後まで見られませんでしたが、アイビーリーグ同士の対決は23-10 でペンシルベニア大学の勝利!だったそうです。よかったよかった。

ちなみにこのフランクリンフィールドは映画『アンブレイカブル』(Unbreakable/M・ナイト・シャマラン監督)で、ブルース・ウィルスが警備員を勤める競技場としてロケで使われたことでも知られています。

2008年10月4日土曜日

アルゲリッチとデュトワ、フィラ管に降臨


瞳が濡れっぱなしだった。歯を食いしばって溢れるのをこらえると、後から後から湧いてくる涙のおかげで眼球が溺れているような感覚に捕われる。そのまま堤防が決壊してドボンと球ごと膝の上にこぼれ落ちるのではないかという恐怖にひたすら耐えた。

それはすっかり白髪になってしまったアルゲリッチが、心持ち足を引きずりながら舞台に現れた瞬間から。ピアノに片手を置き深々と腰から曲げてお辞儀をした彼女。正面を向いた顔は目もくらむばかりに神々しく、幼いころCDのジャケットで見つめ続けたあの美しさ以上。もう何十年もやっているであろうままにふわりと座り、肩の後ろに髪をはねのけ、デュトワを一瞥し、そしてもう弾き始めていた。弾いているというよりは鍵盤の上で呼吸をし生きている。

曲目はプロコフィエフのピアノコンチェルト1番と、ショスタコービッチのピアノコンチェルト1番の2曲。多分どちらも意識して聞くのは初めて。

オケのみのパートではメロディーに体を揺らし、髪を何回もはねのけ、誰を見るというのでもない眼差しを客席に投げ、そしてまるでティーカップに手をのばすかのような自然さで鍵盤に戻る。

音楽として聞くのでなく、彼女の体の一部に取り込まれるような抗し難い快楽に堕ちた。批評などという虚構の客観性の許されない魔力。美しい魔女がかけた罠になすすべもなく嵌っていく。

気がつくと立ち上がって他の観衆と共に割れんばかりの拍手を送っていた。ブラボーの嵐。席を立ち前ににじり寄っていく人々。アルゲリッチを抱き寄せ額に頬に、そして見つめて唇にまでキスを降らせるデュトワ。この元夫婦の偉大なピアニストとマエストロの間には、常人には想像もつかない揺るぎない愛情があるのだろう。その姿にまた瞳が潤む。

アルゲリッチが下がり、気を取り直してムソルグスキーの「展覧会の絵」(ラヴェルによる管弦楽への編曲)を聞く。はずだったが子供の頃親に何度もリクエストしてLP版で聞いた記憶が蘇り、再び興奮状態に。全てメロディーを口ずさめるほど好きだった一曲。バイオリンが、チェロが、ホルンが、ティンパニがこう演奏していたのか、ここで楽譜を捲っていたのかと、楽士たちの一挙手一投足に釘付けになる。デュトワも元妻が去った後の方がのびのびとタクトを振っているようだ。脳に刷り込まれた風景とは違うが、また別の会場で別の画家の絵を見せてもらった。
よかった。よかったなあと思ってまた立ち上がって拍手を送っていたらとうとう大粒の涙が落ちてしまった。眼球はなんとかこらえたが。

秋も深まりオーケストラのシーズンが始まった。フィラデルフィアに引越してきて一番良かったと思うのはこういった名演が目と鼻の先の劇場で格安で見られる事。幸せだ。

2008年10月2日木曜日

妊婦バッジは今でもあるのでしょうか?

昨日友人と話していて久しぶりに思い出したのですが「妊婦バッジ」というのが日本にありましたよね。あれってまだあるのでしょうか?そして普及しているのかしら?

妊娠していて悪阻等々辛いのだがどうしても外出しないといけない。電車の中では極力座りたい。しかし特に初期の妊娠だと気付かれない。だから「私は妊婦です」というバッジをつける事によってアピールし、席を譲ってもらえるように暗黙のうちに促す。というような主旨だったような。

東京にいたころ比較的このバッジについては早い段階から知っていたので、見かけたら電車で席は譲るようにしていましたが、内心では「私も連日終電帰りでヘトヘトなんだけどな〜。できれば視界に入らなければよかったのに」と思っていましたね。またそんなことを考えてしまった自分を責めたりして。

久しぶりに思い出して、アメリカに1年いると考え方が変わるなと思いました。いまはきっぱり「そんなバッジをつけないと席を譲ってもらえないなんておかしい!」と言えます。そしてそのバッジ自体もおかしいですね。聾唖者でない限り、口があるのですから「私は妊婦なんです。このまま立っているのはキツいので席を譲って下さいませんか?」と言えばいいじゃないですか。胎児と母体を守るのは自分ですからね。コミュニケーションの基本は言葉。意思表示はきちんとすべきだし、言われた相手ももし席を譲りたくないのであればはっきり「私も実は腰痛持ちで座っていないと辛いのですよ。他の方にあたっていただけませんか」とかなんとか言えば良いのでは?その会話を聞いた他の人が「じゃあこちらにどうぞ」と言って丸く収まる。というのが理想だと思います。

こう思考が変化をした理由はまず、英語という言語と日々向き合っているからですね。通じるように話さないと誰も察してなんかくれない。さらに構造的に「雰囲気を伝えるもの」ではなく「状況や意志を明確に伝える道具」だからなるべくストレートにクリアーに言うと習慣が身に付いてきたのでしょう。

さらにもう一つ。国民性とかキリスト教的精神と言ってしまえばそれまでですがアメリカ人は基本的に親切です。困っている人がいれば助ける。言葉をかけあって、解決していくというのが身に付いている。くしゃみをしたら「God bless you」から始まり、つまずいたら「Are you OK?」、遠くからエレベーターを目指す人がいたらドアを開けて待っていてあげる。車内から車椅子の人がバスに乗ろうとしているのを見つけ「いまから乗ってくるから席を立って場所を空けてあげて!」と叫ぶご夫人、もっともだという顔で従う人々等。あとどんな下手な英語で話しかけても「無視」とか「聞き流す」という扱いを受けたことが一度もありません。互いに粘って何かの結論を出すまで向き合う。

「空気を読む」とか「察する」とか「暗黙の了解」という七面倒くさい能力を必要とする日本語に比べ、つたない英語での会話の方が変なストレスが溜まらず逆に楽ですね。不思議な事に。

社会が成熟し思いやりや身体的精神的な弱者に理解があり慈愛に満ちていて、その上で個々人が明確な自分の意志を持ち、それを言葉で表現できるようになれば物事はもっと上手くいくのではないか、というのが私の意見です。「遠回し」のバッジで「さりげなくアピール」し、さらにそれを「察し」たり、逆に知っていても「察しないフリをする」。という猛烈にややこしい回路になぜ陥って行くのだろう。道徳の授業かというような注意事項だらけの車内放送の異常な長さ。ヘッドホンを大音量で聞いているためそれに気がつかない乗客という全くもって不毛な現象。痴漢防止策としての女性専用車両もそう。本質的な解決を回避することにかけては非常に熱心で、職人的にその回路をせっせと作る傾向にある。
変な国だなあと、分かるのは外に出てからですね。