2010年12月19日日曜日

フラッシング 其の一

ラガーディア空港のすぐ側にあるため、数分置きに旅客機が腹を見せながら轟音と共に頭上を通過する。ビルの屋上に立って手を伸ばせば届きそうな低い位置を飛ぶので、なかなかの脅威だ。思わずそのつど顔を上げて見てしまうが、街ゆく人々は気にする様子もない。

クイーンズ区の奥地、フラッシングには濃厚なアジアの世界が広がる。70年代には日本からの駐在員やその家族が多く住んでいたそうだが、今ここに住む駐在員はほとんどいないだろう。

最初に増えてきたのは韓国系、その後台湾系、その他の中国の地域からの移民もぞくぞく押し寄せた。メインストリート駅の周辺には中国系や台湾系、少し外れると韓国系、さらにインド系も増えて来ている。

中国語と韓国語の看板が溢れる、道ゆく人はほぼアジア系。聞こえてくるのも中国語か韓国語がほとんど。白人や黒人の姿をみることはほとんどない。街には統一感とか、デザイン性といった計画性が見受けられない。ごちゃごちゃなのだ。街全体が市場。店先で山盛りにして売られる野菜や果物、漢方食材、立ち食い所でかき込む1杯数ドルのスープや1ドルの北京ダック、握りこぶし大のゴマ団子は1個75セント。海賊版のDVDやニセモノの時計を路上で売る人々、その横で布教活動に励む法輪功のメンバー。

マンハッタンのチャイナタウンやコリアンタウンが観光地だとすれば、フラッシングは生活感溢れる庶民の娯楽の場所。近隣の小さなチャイナタウンから週末ともなれば、大勢の中国人が現れ、買物や食事を楽しむのだという。駅周辺には広東料理、四川料理、福建料理、上海料理、台湾料理、さらにマレーシア料理やベトナム料理まで、さまざまなレストランがひしめき合う。

安くて上手い中華料理を食べたければ、マンハッタンのチャイナタウンではなく、フラッシングへ行った方が良いというのは当地に長期在住の日本人にとってはもはや常識。ただ難点はマンハッタンからちょっと遠い。英語が通じない店が多い。ウェブサイトを持たない店が多いため、行ってみないことには何が食べられるのか分からないとあって、食に対する探究心が旺盛なNY在住の日本人ブロガーの記事を読んでも、結局登場する店はいつも同じ小龍包の有名店か、韓国の焼肉店。

そこで私の勤める日系ローカル新聞では「フラッシング特集」を組み、冬オススメの中華スープを紹介することに。ちょうど良いタイミングで、上海で仕事をした経験のあるインターンが来たので通訳を頼み、まあなんとか興味深い店、メニューを紹介することができたのではないかな、と。

この仕事の一番の楽しみは、取材を通じて興味深い人に会えること。今回もYさんという中国育ちの韓国人のおじさんと、運命的な出会い(?)を果たした。彼については次回のお楽しみということで。

こちらが「フラッシング 冬の中華スープ紀行」の記事です。
http://www.ejapion.com/special/585/1/
http://www.ejapion.com/special/585/2
http://www.ejapion.com/special/585/3