2010年6月25日金曜日

渡る世間は…?

取材をしていると色々なことがあります。
いや、NYに住んでいるから色々なことが起きるのかもしれません。

この前、某国領事館に取材で何回か行く機会がありました。またその後も、メディア向けのイベントなどで、どういうわけか、その国の領事の男性と何回か顔を会わせる機会があり…。

で、口説かれました。口説かれるのは好きですよ。オンナ冥利につきるってもんじゃないですか。でもね…。

まあ、状況が状況だったのかも。その国名産の某アルコール(一応お立場がお立場なので隠しておきます)のテイスティングパーティーで、彼はほろ酔い気分でこう言いました。


「君とカーマスートラがしたい」


あのカーマスートラですか????
二の句が継げない私に、彼はこう畳み掛けました、


「君は大人の女性だから、割り切った肉体関係が結べると思う。毎晩電話してくるような、うっとうしいガールフレンドはいらないんだ。お互い、会いたい時に会える関係でいたい。僕も忙しいからね。

僕は仕事で世界中を回っているから、色んな性の技法を知っている。君と新しい世界をディスカバリーしたい。カラダで分かり合いたいんだ。君を裸にして2時間しっかりと指圧をしてあげよう。香港で勉強したから本物さ。

ブロードウェーを見に行こう。チケットなんか立場上、タダで手に入るんだ。でも一緒に行く女性がいない。君と観にこう。他にどんなことがしたいかい?

君はジャーナリストだろう。僕がお金を出してあげるから、僕の国へ取材に行っていろんな街を回っておいで。そして記事を書き、ジャーナリストとして羽ばたきなさい。

ああ、すっごいいいお尻だ。噛み付きたいね。舐め回したい。そこのトイレでセックスしようよ。だめ? You are too shy。オーケー、キスぐらいしてくれるだろう?それもダメなのかい」


一応物事には順番とか、駆け引きとか、嘘でもロマンスらしきものがないと、盛り上がらない私は、すっかりゲンナリしてしまいました。

国際ジャーナリストとなる可能性をばっさりと切り捨て、丁重にお断りしました。こう言って

Sorry. I do not feel chemistry with you.
(あなたにケミストリーを感じないの。つまりあなたには惹かれるものがないのよってことです)

意外にグサッとくる一言かもね。
でも後になって、

「Oh, She used to be my girl. Well, you know just one of them. Actually I can not remember even her face. But she had such a nice ass.....」

とか言われたくないので(笑)。

渡る世間は、ガツガツしたエロオトコだらけ in NY。

2010年6月1日火曜日

クイーンズ午前4時半

全身汗だくで覚醒した。冷房のないこの狭いアパートメントは蒸し風呂状態だ。

昨夜はいつ気を失ったのだろう。
おかしな筋肉痛がカラダを蝕み始め、風邪を引く予感がしたのでいつもより早く、といっても午後10時過ぎだが、帰宅。茹で野菜を塩、胡椒、オリーブオイル、アップルビネガーで和えたシンプルな夕食を食べながら、ネットフリックスで借りた『ディパーテッド』のDVDを途中まで見たのは覚えている。
意識が朦朧としていたせいかもしれないが、英語字幕をつけて見ても話についていけず、やたら「fuck」が連呼されるという印象。ディカプリオやマット・デイモンより、ジャック・ニコルソンに抱かれたいと思う私はおかしいのだろうか、と首を傾げながら、3分の1も見ないうちにギブアップ。そのままベッドに転がり込み、まどろむ間もなく、堕ちた。

ウォールストリートにある弁護士事務所に、午前8時半でアポが入っている。移民局から届いたビザの書類を受け取りにいくのだ。早起きは苦手なので、目覚まし時計を2つ、午前6時45分に設定しておいた、という記憶が夢を妨げる。午前4時ごろから5分おきに目が覚め、時計をチェックしては、舌打ちをして床に戻る。神経質なのだ。そして、午前4時半に諦めて起きることに。

睡眠は脳を休ませるために必要というが、私の場合、睡眠中も脳がフル回転している感覚がある。特にこの仕事を始め、常に締切や取材の問題を抱えているため、残念なことに仕事の夢しかみなくなってしまった。夢の中では大抵、ヒドいことが起きている。校了後の紙面に大きなミスが発見された、取材先から記事に苦情が入った、インタビュー先で英語がまったく出てこなくなる、読者から届いた私の記事へのお褒めの手紙が、実は私が偽造投稿したものと発覚し、編集部から総スカンをくらう…。最後の夢にはさすがに自己嫌悪に陥った。いったい私はどれだけ「褒められたい」のだろうと。

煙草をくわえて表に出た。闇が青さに溶けはじめていた。部屋の中よりよっぽど空気が心地よい。新緑の街路樹に隠れた鳥たちの大合唱に、思わず微笑んだ。そうだ、鳥は早起きだった。足早に仕事に向かう労働者の姿もちらほら。

部屋に戻り、『LEE』誌上での、中山美穂と辻仁成の対談に目を通す。女性誌らしく、きれいにまとめられた内容だが、それでも生活のリアルさを感じられるのは、同じように海外でガイコクジンとして暮らしているからかもしれない。最近になって彼女が好きになってきた。リアル、があるからだと思う。生々しさでもなく、共感や親しみやすさでもなく、憧れでもない。ああ、この人の生き様がここに出ているなあ、リアルに表現されているな。と思うと、好きになる。それは彼女自身というより、編集方法が上手いからだ、とも言えるが。

ちなみに、日本の雑誌はニューヨークでも簡単に手に入るが、高い。『LEE』も17ドル50セントもした。一緒に購入した『BRUTUS6月号ーポップカルチャーの教科書』は14ドル90セント。今更ポップカルチャーだなんて、と苦笑しながら、でも買ってしまった。ホームシックなのだろうか?

街が起きてきた。さて、シャワーでもあびますか。