2009年11月16日月曜日

NYの金閣寺



自分が担当する巻頭特集がなんとか無事終わった、のですがすぐにまた次の特集の準備にとりかからねばなりません。発行された掲載紙を見ても、満足感や達成感を覚える心の余裕すらありません。

次に担当する特集は、前回と全く毛色が違い、リサーチ方法も”自分の足でニューヨークを歩いて探せ”とのこと。「靴の底がすり減るまで歩いて探して下さい」「マンハッタンなんて、山手線の内側くらいの面積だから大したことないわよ」と先輩編集者に言われ、徹夜続きでフラフラの体にむち打って、土日はかかとが痛くなるまで歩き回りました。

小雨の降る土曜日の午後。傘をさしたら視界がさえぎられるかもと思い、あえてパーカーのフードを被っただけで回ったのは、南北で言うとブルーミングデールズのある60丁目からロックフェラーセンターのある48丁目まで、東西で言うとレキシントンアベニューからセントラル・パークの西の端の8番街まで。日曜日の午後回ったのは、グリニッジビレッジとウェストビレッジの周辺。デジカメをメモ帳代わりにこれぞと思う風景を撮ったら同時に、クロスストリートの表示を探して撮り、家で地図とにらめっこ。土地勘もない上に相当の方向音痴と来ているので、想像以上に時間がかかった割には収穫は今イチ。自己嫌悪に陥る暇もなく、締切がちらつきます。

そんな中、ちょっと素敵な報告を。5番街のティファニーのウィンドウディスプレイをのぞき込んだ時。日本の金閣寺他、寺院などトラディッショナルな風景写真をバックに、宝石が展示されていたのです。ドキッとすると共に、鋭く粋な感性をそこに見ました。こういったディスプレイ1つで店内に足を踏み入れたくなるか否か決まりますから、そこには多くの試行錯誤とその道のプロの計算し尽くされたバランス感覚があるのでしょう。いつかそういった人をインタビューしてみたいなあと心から思いました。

毎年恒例のロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式は、今年は12月2日の水曜日だそうです。正面にあるデパートメントストアー、サックスフィフスアベニューも、ビル外壁のイルミネーションの取り付け作業は完了していましたが、点灯はまだのようでした。サンクスギビングデーが終わるまで、アメリカ人の気分はターキーモード一色だそうです(笑)。ロックフェラーセンターのアイススケート場はすでに公開されていました。これからニューヨークは観光シーズンなのでしょうね。

でも個人的には六本木のけやき坂あたりのイルミネーションの方が、絶対気合いが入っていて綺麗だと思いますよ。発光ダイオードの青色のイルミネーションと、むやみやたらに”恋人と過ごせ”と煽る日本のクリスマスがちょっと懐かしいこのごろです。

2009年11月11日水曜日

こんな夜更けに納豆かよ in NY

仕事になんとか区切りがついたのは午前1時。さすがにオフィスには私1人しか残っていなかった。明日の校了にこれでなんとか間に合いそう、とはいえ油断は禁物。もうこれで大丈夫、と気を抜くと印刷所に回したあと、しまったーとミスに気がつくことになるから。一行ショートだったとか、常用漢字以外を使用したとか。この辺りのルールは厳しいので。

深夜0時を過ぎたらタクシーでの帰宅が許されているので、今夜は堂々と会社前で拾った。ニューヨークの街は、車の7割がイエローキャブなんじゃないかというくらい走っているので、つかまえるのはたやすい。下手に12時ちょっと前に退社して、24時間営業とはうたいながらも、めったに来ない地下鉄を待つより、タクシーで帰った方が早かったりして。

ただ私はタクシーとは相性が悪く、前回はバッグから滑り落ちた携帯電話を置き忘れ、今日は車を下りようとした瞬間にまた、買ったばかりの携帯電話がジャケットのポケットから地面に落下。衝撃でカバーが外れバッテリーがとびだしてしまった。部屋で元通りに組み立てたものの全く電源が入らない。ただいま充電中だが、どのボタンを押しても反応しないのが恐ろしい。充電が終わったら元に戻るのだろうか?ダメならまた、ベライゾンの支店に行かないと。

マンハッタンのオフィスからクイーンズの自宅まで、タクシー代は20ドルちょっと。経費に計上するためレシートを提出しないとといけないのだが、前回はもらったレシートをなくし、その前はもらい忘れた。やれやれ。Such a silly girl.

マンハッタンとはマンハッタン島という島である。クイーンズはロングアイランド島の西端に位置する。島から島へ。毎日移動しているわけだ。タクシーに乗り、会社のあるイーストビレッジからパークアベニューを北上し、59番ストリートを右折すると、クイーンズボロ橋に出る。橋を渡りながら振り返って見えるマンハッタンの夜景は絶景だ。エンパイアステイトビルも、クライスラービルもよく見える。24時間のうち、たった数分間の優越感。私はニューヨークでバリバリ働くキャリアウーマンだぞーってね。

ちなみに、ニューヨークにはバリバリに働くキャリアウーマンなんて、掃いて捨てるほどいるし、そのほとんどが私より優秀なんだろうけど、まあ、とうとう失業率10%を上回ってしまったアメリカで、仕事があるだけ良いか、と思いつつ冷蔵庫を開けたら納豆しか残っておらず、ねばねば糸をひいている、雅子なのでした。

2009年11月1日日曜日

ブルックリンの秋





ブルックリン初上陸の日でした。
1カ月前まで、ブルックリンとブロンクスの違いも分からなかったのに、いまや取材で飛び回る日々です。

Kingston 駅でおりました。おりてビックリしたことが二つ。
帽子を被ったユダヤ教徒の多さ。こんな昼間から何をしているのがよく分かりませんが、いい年をした大人達がのんびりとベンチで話し込んだり、何か宗教的な建物にぞくぞくと集結していく風景に遭遇しました。

もう1つのビックリは紅葉の美しさ。マンハッタンのオフィスとクイーンズの自宅を行き来しているだけでは、見えなかった穏やかな住宅地の秋の風景がそこにはありました。駅のまわりに、スターバックスすらなく、空腹を抱えたまま4時近くまで取材は続きましたが、でも本当に来て良かった。

違う時間の流れに身を置くというのは、良いことですね。
世界が私を中心に回っているわけではないという、当たり前かつ、有り難い現実に引き戻されるわけですから。私を中心にというのは、私の喜びも悲しみもという意味です。私の辛さや悲しみなんて、世間一般にはなんの価値もない。古着屋だって買ってくれない。だから肩をすくめて耐える訳ですが、そこまで意識的に絶えずとも、力がぬけ、ふっと楽になれる時というのがあります。いい風景を見た時、もっと頑張っている人をみたとき、そして自分がとても卑小な存在に見えた時です。