2009年7月20日月曜日

国へ帰る人

同僚のインドネシア人の寿司シェフが1人、母国へ帰っていきました。観光ビザで入国し、そのまま数年間違法に居座って仕事をしていたので、これで帰ると当分はアメリカに入国できません。ガールフレンドが待っているそうです。帰ったら何をするのと聞いたところニヤッと笑い

「当分はリラックスしたいね」

「寿司シェフとしてレストランで働けそう?」

「どうかなあ。インドネシアにも寿司シェフはいっぱいいるからねえ」

週6日馬車馬のように働き、カウンター越しにいつも「疲れた。眠い」と日本語で私に愚痴っていた彼。アメリカに来た理由はただ一つ

「金」

だそうです。インドネシアでは稼げないから。日本にも数ヶ月語学留学をしたそうで、ちょっとなら話せました。日本に行って、アメリカに来て、夢を追って生きてきたのでしょう。今の彼の胸にあるのが、挫折感だけでなければ良いのですが。

「アメリカの生活はつまらない。はやく国に帰りたい」
とよくこぼしていました。一日だけの休日は寝て、テレビゲームをやっておしまい。彼を含め、ほとんどのインドネシア人たちは終バスでサウス・フィリーへ帰っていきます。きっとそこにインドネシア人コミュニティーがあるのでしょう。情報がまわり、仕事の斡旋もあるのかもしれません。彼の後釜として働き始めた新米のシェフも、またインドネシア人でした。

韓国のテレビドラマにでも出てきそうな、口元がちょっとだらしないけど、目元が涼しげな優しい若者でした。一ケ月ちょっとの付き合いでした。もう二度と会う事もないのでしょう。

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