2009年7月16日木曜日

声優、再び

「日本語訛のある英語の声優を募集していて、急な話ですが明日空いていますか?」

と依頼が飛び込んだのは、事前に登録してあった通訳や翻訳、語学教師派遣を扱う会社から。すぐにスクリプトがメールで送られてきて、練習する暇もないまま電話でオーディション。オーディションと言っても、他にライバルがいたとは思えず、5分後に合格通知の電話。なかなかネイティブのように話せないというコンプレックスがこんなところで役に立つとは。それに報酬もなかなかのもので、私が週2回1ケ月間日本食レストランで働くよりも高い!

そして本日午前11時。我が家から徒歩10分ながら、今までのぞいた事もなかった汚い路地の地下にあるスタジオに集まったのは、フランス人、オーストラリア人、インド人、メキシコ人、アメリカはジョージア州出身、そして日本人の私。求められていたのは日本語訛だけでなく「多様性」だったようで、(ジョージア州出身の人はアメリカ南部のアクセント)、実は某大手製薬会社のCMのナレーション録音でした。

まずは先に収録したCMのビデオを全員で鑑賞。不景気のイメージ、競技場でアスリートが倒れるショット、山の頂にクライマーが到達するシーン、製薬工場での製造ラインの映像、笑顔の病人や顧客、活き活きと働く人々、といった流れ。

渡されたスクリプトは全員同じ。要は、この不景気の中、我々の供給戦略は一時つまずきを見せたが、今後は問題を解決しさらなるチャレンジをし続ける。再建を誓い、更なる顧客ニーズに答える姿をアピールしようというものでした。

個別にガラス張りの防音室に呼ばれ、ヘッドホンをし、ミュージックビデオなどで見る丸い網が張ってあるマイクの前に立ち、録音スタート。

That's the business we're in. That's how we manufacture success.
We're committed to delivering on time. All the time. Every time.
The world expects it. And together we will deliver what we promise.

(一部抜粋)

なんのこっちゃという感じもしましたが、錆び付いていた、かつて大学時代演劇サークルにいた日々と思い出しながら、情感たっぷりに下手な英語を読み上げたところクライアントは大満足。私の収録は10分程度で終了。

待機していた時間の方が長く、他の5人と雑談をしながらコーヒーを飲み、2時間半くらいだらだらしてしまいました。他の”声優”たちもなかなかの個性派ぞろいで、ソプラノ歌手、会社経営者、通訳、ファイナンシャルプランナー、IT関係と実に様々。そして皆英語が上手い(オーストラリア人とジョージア州出身は当たり前ですが)。こんなに外国人でありながら、アメリカという地で逞しく生きている人がいるのだから、私ももっともっと頑張らんとアカンねえと、久しぶりに気合いが入りました。

「多様性」を訛のある言葉で表現する。「多様性」をアピールすることで、親近感を持ってもらう戦略に出る。アメリカならではの発想ですね。顔はいっさい出ませんし、どの部分が使われるのか全く分かりませんが、オンエアが楽しみです。多分、日本で流れることはないと思いますが。

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