2009年3月16日月曜日

ゲイルとの再会


ゲイル姉さんは逞しい。彼女と出会ったのは日本人とアメリカ人(あるいは他の国の人)が週1回フィラデルフィア市内のカフェに集まり、互いの言語を勉強しましょうという勉強会にて。

結婚まで考えていたボーイフレンドの浮気に激怒。彼の顎に強烈なパンチを食らわし一緒に住んでいた家を飛び出した。連日自宅に籠り大失恋に泣き明かし、ピザを食べまくった結果「かなり大きめ」になってしまったが、顔立ちはなかなか愛くるしい。そして、建築家という素晴らしいキャリアも持っている。
友人が日本で英会話の教師をしていたことから、ここいらで心機一転日本へ行き私も英語の教師になろうと。気持ちを切り替えて人生を再スタートするわ。とはいえ、日本に行くのも初めて、日本語も1から勉強。なかなかの決断力である。

彼女とはよく遊んだ。アトランティックシティにある彼女の父親の家に呼んでくれたり、友人もたくさん紹介してくれた。パーティー大好き、姉御肌の気さくな、そしてめっちゃパワフルで、非常に気が強い。でも根はとても優しい、という全てがオーバーサイズ気味のアメリカンガールに、私のフィラデルフィア最初の1年は、振り回されたというか、お世話になったというか。日本へ旅立つ送別会では、巻寿司を作って持っていき押しつぶされそうなビッグなハグをもらった。

そして私の帰国の折に日本で再会しようと約束。アメリカに戻る前日、成田のホテルを取ったことを知った彼女は
「私の家は勝田台よ。成田のホテルなんかキャンセルして私の家に泊まりなさいよ。昼間は学校で教えているからその間はあなたは昼寝してて。夜9時ごろ戻るから夜を徹して飲み歩きましょう。飛行機で寝て帰れば時差ぼけもないし、バッチリじゃない」
と相変わらず強気のオファーを。はいはい。言うことを聞きますよ。

勝田台の駅前で待ち合わせ、驚いた。なんとまあすっきりとしたこと。
「日本食は痩せるわね。毎朝、卵かけご飯を食べているのよ。持ってきた服がブカブカになっちゃたわ。今は日本のLサイズの服が入るのよ」
日本語も随分上達していた。散歩しながらいつもiPodで日本語のプログラムを聞きながら音読しているとのこと。

そしてすっかり地元に馴染んでいた。行きつけの居酒屋を1人で開拓し、扉を空けると「ゲイルさ〜ん」と声をかけられるまでになっていた。その夜、語り尽くしながら回った居酒屋は記憶の限りで言えば4軒!行ってみたかったけどホステスバーと区別がつかないからついてきてと、共に開発したところも1軒。

「もうすぐパパが遊びにくるの。英会話の教室に連れて行って生徒をびっくりさせるつもり。だって彼すっごく大きいでしょう。その後一緒に沖縄に行くの。石垣島も。だからユウキュウ(有給)を貯めているのよ」

「若い女性の生徒さんたちがニューヨークに行きたいって盛り上がっているんだけど、This is a pen.くらいしかしゃべれないのよ。絶対に無理だわ、と思って空港にうちの弟を迎えに行かせることにしたの。ね、彼ものすごくハンサムで、優しい子でしょう。彼女たちは彼の虜になるわ。そしてそのあとパパが彼らを連れて観光案内をして家にも泊めてあげることになっているの」

姉御肌のところは相変わらず。優しさも、美しさも増して益々輝く彼女に圧倒された。異国の地で生き抜くという意味では私も彼女も一緒。励まし合って、パワーをもらって、日本最後の夜は過ぎていった。

「日本にきて何が一番自分の中で変わったと思う?」
「すこし静かになったかしら。色々と考えるようになったわよ」

飛行機の中で飲みなさいと睡眠薬までもらったが、実際必要なかった。ぐっすり眠って時差ぼけ知らず。

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