2009年9月8日火曜日
こうしてNYの夜は更けていく
今日はレイバーデイ(Labor Day)。日本で言うところの勤労感謝の日。9月の第一月曜日にあたり、土日と合わせて通常会社は三連休。だが、私の勤務する日系の会社は関係なし。
まだ入社したてで、抱えている仕事もないので、残業する同僚に申し訳ないとは思いつつ6時半で退社。深夜残業、土日出勤は当たり前の会社。アメリカ人に話すとクレイジーだと言われるが、東京の生活にもどったと思えば同じ事。働く事は生きる事。仕事があるだけ有り難い。仕事を趣味にすれば、別に辛くもないでしょう。
せっかく時間と体力があることだし、ここ連日イーストヴィレッジの職場からクイーンズの自宅までまっすぐ帰っていたので、土地勘をつけるためにも途中ミッドタウンを散策することに。
グランドセントラル駅で途中下車し、41ストリート周辺の日本食材の店に寄ろうと思ったが、ここもレイバーデイでお休み。観光客を乗せたバスは満席だが、ビジネスエリアは心なしか寂しい。ブックオフは開いていた。ガラス戸を開けすぐの右側の掲示板には、英会話教室、ルームメイト募集、ベビーシッターします、フラワーアレンジメント教室等の張り紙が所狭しと貼られている。簾状に切り込みが入った紙にちまちまと書かれた電話番号。破られているものあり。そのままのものあり。すべて日本語。
ブックオフ内を流れる、従業員が録音したと思われる棒読みのアナウンスが非常に煩わしい。
「ニューヨークにきて3年が経ちました。友達もいっぱいできました。そして来月日本に帰る事になりました。英会話の教材を売ろうと思います。そんなお声、大歓迎です。ぜひブックオフであなたの本をお売り下さい」
中型店舗だが、日本に比べるとやはり品揃えが今イチ。昔読んでどこかへやってしまったポール・オースターの『ムーン・パレス』が欲しかったのだが見当たらず。8時の閉店間際まで迷ったあげく、唯一あったボール・オースターの作品『シティ・オヴ・グラス』(1ドル)と、ジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』(5ドル)を購入し表へ。ブライアント・パークの木立越しに、エンパイア・ステイト・ビルが見え隠れ。なぜか薄暗い公園では卓球をする人たちが。
タイムズスクエアまでくると、さすがにいつものごったがえした風景だった。電飾の華やかさにホッとすると同時に、フードトラックから立ち上る肉の焦げる匂いにはじめて空腹を覚えた。地下鉄に乗り、iPodで英語プログラムを聞きながら帰宅。車両の軋む音が尋常ではないので、いつも耳が壊れんばかりの大音量で聞いている。人目も気にせず音読。今日のテーマは『工場の閉鎖を従業員に伝える』というものだった。
最寄り駅近くの、ヒスパニック系のおばあちゃんが「アメリカンチーズなんかいらないよ」と大声でどなっているグローサリーストアーでバドワイザーを買い家にたどり着く。ちびちび1人でやりながら納豆ご飯に缶詰のミネストローネをかきこんだところで、ヒドい頭痛に見舞われた。ヒスパニック系の住民たちは花火を上げて外で大騒ぎ。レイバーデイだからか?
狭い部屋ではますます気が滅入るので、空気を吸いに外に表へ出ると、1階の住人Aさんがタバコを吸っていた。もうアメリカ生活は10年以上という彼女。年も私より十は上。日本にいたころは地方の新聞にコラムを持っていたらしい。紆余曲折あって、今はマンハッタンにある日系のグローサリーストアーで働いている。引越してきた夜に知り合い、意気投合。なかなかの才媛でマルクスからショスタコービッチまで、「わたしなんかジャンキーで、いいかげんなオンナよ」とふわふわと笑いながら、すぱすぱタバコをすいながら、のんびり話してくれたっけ。ええ2時間ばかし。けど、今日はそんな気分になれず、二言三言話して部屋に戻った。
こうしてニューヨークの夜は更けていく。また明日があるので、明日があることを前提としなければいけない生活なので、このあたりでおやすみなさい。明日はチャイナタウンで、究極の餃子を探す取材…。
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4 件のコメント:
いつも日本から拝読しています。
NEW YORKはどうですか?新しい仕事新しい生活サイクル、慣れるまでは日々ぐったり、でしょうか?
体に気を付けてくださいね。ブログですからご自分のペースでしょうが、私はこのブログの大ファンです。
甲斐田さんのブログを先週、偶然見つけた者です。ほんの少し読んで、楽しくなってきて、それからどんどん過去のものを読みあさっているところです。使われている言葉が素敵で、文章のリズムが軽快で読みやすく、本当に楽しませてもらってます。
私は1年くらい前に大阪からフィラデルフィアの郊外に来ました。もう少し早く甲斐田さんのことを知っていれば、実際にお会いする機会もあったのかも…なんて後悔してます。
私も以前、NYのロングアイランドに学生として少し住んでいました。週末ごとにNYCに観光へ行っては、大阪での多忙な生活を思い出して『帰りたくないな…』と感じていたものです。今の甲斐田さんは、たぶんそんな気持ちも乗り越えて、NYに立っていらっしゃるのでしょうね。 ところで、私もそろそろこちらで、仕事を始め、自分の根をおろそうかと考えているのですが、甲斐田さんがフィラデルフィアで登録していらした、派遣会社ってどこですか?教えていただけると有り難いです。
では、季節の変わり目と環境の変化で、あまりムリをしないよう、体に気を付けてくださいね。
miyakoさん
日本からお読みいただいているとは。
嬉しいです。特に広告もつけずにのんびり書いているだけですが、こうして読んで下さっているということが励みです。
Keikoさん
フィラデルフィアの郊外にいらっしゃるのですね。私も心の故郷はフィラデルフィアの方で、時間さえあれば週末も帰っています。
私が短期間だけお世話になった翻訳・通訳の会社は Global Arenaです。HPはこちらです。
http://www.globalarena.com/
あと、日本語をアメリカ人に教えるというのであれば日本でもおなじみ、ベルリッツがフィラデルフィアにもあります。ただどちらもこの不況下あまり期待できませんが。
素敵なコメント、本当に嬉しかったです。またお立ち寄り下さいね。
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