2008年12月25日木曜日

Merry Christmas from Philadelphia













「Happy Holidays!!」の挨拶が街中を覆う素敵な季節になりました。日本では恋人たちのクリスマスというイメージですが、アメリカでは家族のためのクリスマス。一般的に家族そろって夕食を食べたり、プレゼントを交換する日です。そして宗教的な基盤がしっかりした行事なので、クリスマスセールなど商業色が強くなってもまだその祭りの意味合いを、納得のいく形で見つめることができます。

街頭のイルミネーションは、正直言って表参道辺りの方がばっちりフルメイクという感じです。ただフィラデルフィアは古都の町並みが残り、観光用とは言え馬車が走っていたりするので、趣がありますね。海外でクリスマスを過ごせるのは、クリスチャンでない私でも温かい気持ちで幸せになれるひとときです。

センターシティにあるデパート、Macy'sの3階で開催中の「Dickens Village」のショーへ行ってまいりました。ここのMacy'sは世界一大きなパイプオルガンを有する、荘厳な新古典主義様式の歴史ある建物(元はデパート王のWanamaker's building)です。クリスマスシーズンには電飾のイルミネーションのショーが有名ですが、今回見学をしてきたディケンズの「クリスマスキャロル」のストーリーを再現した人形ショーもなかなかのものでした。物語の街を歩いているような感覚にさせられるディテールにこだわった展示。等身大のリアルな人形たちが首を振ったり、ダンスをしたり、叫んだり、カタカタと動き、お化け屋敷のようでちょっと不気味でしたけれど、お話自体も守銭奴のスクルージに、死の恐怖を味わわせてまで、キリスト教的博愛と美徳を説く道徳訓話ですから、それはそれで雰囲気がでていて良いのかもしれません。

イメージを伝える手段として踊りだったり、芝居だったり、映画だったり、色々な表現方法を考えてきた人間ですが、こうした動く人形を使った展示というのはあまり日本には馴染みがないかもしれませんね。

ところがです。これはまだほとんど知られていないことですが、明治から昭和初期に三代にわたって皇族や財界人らに愛された人形師「永徳斎」(えいとくさい)一族というのがいたのですね。 その中でも三代永徳斎(山本保次郎)は、フィラデルフィアに1907年から1927年の20年もの長期に渡り滞在し、今はなき「フィラデルフィア商業博物館」に勤務。展示用生人形や模型の製作に従事したという歴史があります。まだ美術館にCGによる解説や、展示用ロボットがなかった時代、ジオラマや人形モデルを利用した展示は今以上に効果的だったのでしょう。詳細につくられた等身大人形で日本、中国、フィリピン等の世界諸国の生産労働や風俗を表現。残念ながら彼のフィラデルフィア滞在中の作品は、テンプル大学に小型のものが3体残っているだけで、写真でのみその功績を見る事ができます。

彼の研究を続けておられる、作家の圓佛須美子(えんぶつすみこ)さんの講演会に参加させていただいたのは11月20日(木)のこと。残念ながら観客は10人程度しかいませんでしたが、流暢な英語での講演と写真スライドに吸い寄せられました。いいお仕事をされているなあと思ったのと同時に、人形を使った展示の魅力がよく分からなかった記憶があります。それがこうしてMacy'sの人形たちを見ているうちに、アメリカの文化にこの表現形態が根付いている事実。そしてそこに日本の匠の技が出会い一時代を作った歴史を、どどどどと打ち寄せる波のように体感することができました。

英語での解説ですが、フィラデルフィア日米協会のホームページに「永徳齋」の講演会についての情報が載っています、ご興味があればご覧ください。
http://jasgp.org/component/option,com_events/Itemid,176/task,view_detail/agid,407/year,2008/month,11/day,20/

何かが分かったと感じられる瞬間はいいですね。Macy'sのクリスマス電飾イルミネーションとパイプオルガンの調べをYoutubeにアップしたのでご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=DSiIv7ufWlU&feature=channel

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