2009年10月19日月曜日
Aさんの漬け物
今夜の最低気温37℉。摂氏に直すと3℃ちょっと。
寒い…。今年のニューヨークの冬は例年になく寒いらしい。秋を楽しむ間もなく、真冬に一気に突入しそうな気配。さらにここ数日、冷たい雨が降り続いている。
1階の住人Aさんとスモーカー同士、玄関先で震えながら会話。大都会の危険と、人の冷たさと孤独について、色々と話してくれた。彼女自身マンハッタンに住んでいる時に、ホールドアップでバッグを盗られた経験も、信用していた人にだまされた経験もある。東京と似て大都会ニューヨークで暮らす人は、常に警戒心から解放されないため、なかなか心を開かない、開けなくなっているのだという。逆に最初からニコニコと近づいてくる人は、警戒した方がいい。下心あってのことが多いから。「でもね」と彼女は続けた。
「私は人への希望を捨ててはいないんですよ」
啖呵を切って仕事を辞め、雨の夜、この先どうしようと途方にくれながら軒下で雨宿りをしていた時、通りすがりの見知らぬアミーゴが振り返り様に声をかけてくれたのだと。
「Don't think too much!」
「ほんとそれだけでね、その後会うこともない人でしたが、でもそこに私は神を見たんですよ。一瞬でしたけど、ぱああっと一気に気持ちが楽になって。私も単純だから…」
またたく煙草の火から、ぬくもりが全身に伝わってくるように感じた。そう、そういうささやかなエピソードに時々救われながら、都会に漂流した難民たちは生きぬいていくのだ。
約束した雑誌を渡すため、部屋に一旦戻ってから、彼女の待つ階下に行くと、スターバックスのプラスチックカップに入れた、自家製の漬け物を持ってきてくれていた。拍子切りにしたニンジンと薄切りタマネギを、鰹節と醤油で合えたシンプルな漬け物。
「こう手でつまんで、ポリポリかじってちょうだい」
それは胸が痛くなるほど、優しい味がした。
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