2013年8月18日日曜日

Stop & Frisk(職務質問)

ここ最近、ニューヨークの地元紙紙上を踊る「Stop & Frisk」(ストップアンドフリスク)という言葉がある。日本語に直すと「停止と捜検」。簡単に言うと職務質問のことだ。ニューヨーク市警察(NYPD)の「停止と捜検」が黒人とヒスパニック系(南米からの移民)に偏っていると問題になっているのだ。

 有り難いことに、私は今までNYPDの職務質問を受けたことがないが、路上で警官に囲まれ職務質問や身体検査をされている人を見たことは何回かある。確かに黒人かヒスパニック系がターゲットになっていること多かった。

  そして今月12日、マンハッタン区にあるニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は、NYPDによる 「停止と捜検」の方法が、不法な捜索や押収(差し押さえ)を禁止する、合衆国憲法修正第4条(Fourth Amendment)に違反すると判断。「停止と捜検」の実施方法を確認する必要があるとし、警官の体にビデオカメラを装着し調査する、1年間の試験プログラムを導入するようNYPDに要求。同プログラム導入にかかる経費はすべて市の負担となる。つまり職務質問をする警官が人種差別をしていないか、警官の体につけたビデオカメラで撮影し、それを分析して判断しよう、ということだ。

 これにはマイケル・ブルームバーグ市長激怒。「警察の職務や憲法について理解していない裁判官による非常に危険な判断」であるとし、同プログラムの実施が市内の犯罪防止を妨げることになると激しく反発。まあそりゃ、そうだろうという反応だ。

 裁判では2004年1月から12年6月までの440万件の職務質問に関する統計が引用された。この統計によると職務質問対象者の52%が黒人、31%がヒスパニック、10%が白人だった。一方2010年の市内人種比率は黒人23%、ヒスパニック29%、白人33%。確かにこうしてみれば、職務質問の対象者に偏りがあると批判されても仕方がない。

 一方NYPDのレイモンド・ケリー本部長は、当局が行っている「停止と捜検」 が偏った人種に集中して行われているとの批判に対し、「強盗、銃撃、重窃盗などの凶悪犯罪を犯す加害者のうち、 70~75%がアフリカ系アメリカ人(黒人)。 現実に犯罪は有色人種のコミュニティーで起きている」と述べ、「停止と捜検」で尋問される52% が黒人であることは、犯罪加害者の割合に基づいている、と反論。ブルームバーグ市長も「停止と捜検」に対し、 近年の市内における犯罪率低下に貢献していると評価してきた。

 裁判官、当局および市長は、どちらもファクトや統計に基づき語っている。要はどちらの切り口に正当性を見いだすかということになる。NYPDからマークされにくいアジア系であることを有り難く思いつつ、犯罪を減らしてほしいとNYPDの仕事ぶりにより強い期待を寄せながら、人種差別的行為にはマイノリティーとして怒らずにはいられない。実際所持品など検査され、しょうもないマリファナ所持ごとき(マリファナ所持ぐらいだったら白人でもゴロゴロいます。念のため言っておきますが私は薬物はやりません)で引っ張られるのは、納得がいかないだろう。

 どこに自分の立ち位置を持っていくのか定めることは、とくに海外に暮らすと複雑になってくる。世間を知るほど、軸足をどこに置くべきかが分からなくなる。声高に分かりやすい正義を語る人ほど胡散臭い。でも何とか、正義らしきものを作って、人々からコンセンサスを得て、前に進んでいかないと歴史は紡げない。生きてくって何て面倒くさいことだろうと、心底思うのです。

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