2009年2月16日月曜日

フィラデルフィア偉人伝① 岩倉使節団



岩倉具視を特命全権大使とした「岩倉使節団」は、近代国家日本の指針を求めて明治政府が欧米諸国に派遣した公式の使節団である。

1871年12月に横浜港を出発し、帰国したのは約1年10ケ月後の1873年9月。そのうちフィラデルフィアに滞在したのは1872年6月22日から25日の4日間。この間彼らは合衆国造幣局、フェアモントパーク、州議事堂(現独立記念館)、蒸気機関車の製造工場などを視察して回った。

一行がとりわけ注目したのが造幣局。使節団に随行した歴史学者の久米邦武がまとめた旅行記『米欧回覧実記』には、鋳造過程や貨幣のコレクションの見学の模様が詳細に描かれており、明治政府が対外貿易のため諸国との交換率を定め改鋳した新しい貨幣「円」の行く末を、彼らが見つめていたことがうかがえる。

18世紀を通じてフィラデルフィアは北米最大の都市であり、独立戦争の舞台となったアメリカの自由のシンボルの街でもある。独立宣言の起草が行われ、合衆国憲法が制定された州議事堂。ここを訪れた感想を久米は次のように記している「いまでは堂々たる合衆国憲法のもとに、3億7000万ドルの歳入を持ち、世界に隆盛を示しているアメリカであるが、その起源は、この議事堂に愛国者たちが集まり、苦心を重ねながら自主の権利を勝ち得たのである。その時の状況はどのようであったろうと想像してみた」。

岩倉使節団がこの地で吸収したものは、アメリカの"技術"であり、また自力で勝ち得た"自由"と"権利"の歴史的重みであったのだ。


※これは「週刊NY生活」NO.242、『フィラデルフィア偉人伝』シリーズに筆者が寄稿した原稿の転載になります

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