2008年7月3日木曜日

「超」未整理法

渡米前は想像できなかったことですが、こちらにきて韓国人や中国人の友人が生まれて初めてできました。お互いつたない英語で必死で伝え合うとき、そこに嫌韓とか、反日感情とか、歴史問題、領土問題といった阻害要素が介在せず、驚くほど素直に向き合えるのです。

あそこでアジア系の食材が安く手に入る。
あそこで無料の英会話教室がある。
近所のお祭りはいつだ。

同じ場所で共に生きぬく、というシンプルかつ根源的な悩みを個人レベルで共有したとき、以外にあっさりと問題は解決するのではというのが実感です。

昨日会った中国人の女の子には本当に驚かされました。日本が大好き。日本のものなら食べ物も、文化も、価値観も全部好きという彼女。某日本人歌手によく似た愛くるしい顔立ち。身につけているクリスタル系のピカピカした小物もよく似合います。英語ほどではないですが、日本語も1年しか勉強していないというわりには流暢。日本が好きと言ったところで、アイドルやアニメが好きな程度だろうと高をくくっていたら大違い。

「中国の政府は本当に馬鹿みたい。南京の虐殺だって何回も持ち出しては日本政府に謝れって言うでしょう。でも私知っているのよ。日本の政府はもう何回も謝ったし、お金だっていっぱい中国に渡している。第一アメリカなんか原子爆弾を広島に落としているのに、一度だって謝っていないじゃない。あと日本でたった一校か二校、中国との戦争の表記が間違っている教科書を取り入れた高校があったときも、中国じゃ新聞の一面の大見出しよ。それで中国じゅうが日本のについて間違った情報で混乱して、日本を憎み続ける。おかしいよ。日本はあんなに小さな島国なのに、世界第2位の経済大国でしょう。もっといっぱい学ぶべきものがあると思うのよ日本から。いま中国じゃ土地がないからってすぐに木を切っちゃって、誰も環境のことを考えていない。中国にいるときに日本人の留学生にいっぱい会ったけど、みんな優しくって私によくしてくれた。そしてとっても頭がいい。ほんの数ヶ月いただけでも必死に勉強して中国語をマスターしていく。でも日本に長いこといる中国人で全然日本語を話せない人、いっぱいいるよ。」

唐辛子粉で染まった細ちぢれ麺のラーメンをすすりながら、英語で語る語る。その勢いに押されしばし呆然。

彼女の情報が100パーセント正しいかはともかく、そんな風に考えられる中国人がいたということに本当に驚きました。そしてそれを日本人である私に伝えようとする必死さにも。上記の捉え方は、比較的私にとって受け入れやすいし一般的にも浸透されたものだとはいえ、あえて面と向かって話題にすることは避けてきました。正直、そういったナショナリズムを背負ってアイデンティティにするのは嫌ですし、あまりクリエイティブだとも思えないので。

もし昨年くらいに彼女に日本で出会っていたら、もっと心を動かされのたかもしれません。好むと好まざるとに関わらず「愛国心」とか「日本人論」といった虚実のトレンドを、マスコミがムーブメントにしようとしていた影響を、少なからず受けてしまったでしょうから。

強烈なインパクト後の感情が帰結する場所を失い、しばらく彷徨いました。もしかしたら彼女のように自国を客観視できる人が中国にも増えてきているのかもしれない。いやでも、そこまで愛されるほどの国なのか日本は?という問い。アメリカかぶれならぬ日本かぶれになっていないかい?という彼女への疑問。

しかし最後はシンプルな思考へと大きなループを描いて戻ってきます。結論がでないまま小さな引き出しを作って、そこへペンディングにしておくしかないなあと。気になってまた開けて見てしまうかもしれないし、二度と思い出さないかもしれない。海外に住むと、こういった引き出しがどんどんと増えていきます。簡単に整理できる方法は、ないですね。

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