「日本語訛のある英語の声優を募集していて、急な話ですが明日空いていますか?」
と依頼が飛び込んだのは、事前に登録してあった通訳や翻訳、語学教師派遣を扱う会社から。すぐにスクリプトがメールで送られてきて、練習する暇もないまま電話でオーディション。オーディションと言っても、他にライバルがいたとは思えず、5分後に合格通知の電話。なかなかネイティブのように話せないというコンプレックスがこんなところで役に立つとは。それに報酬もなかなかのもので、私が週2回1ケ月間日本食レストランで働くよりも高い!
そして本日午前11時。我が家から徒歩10分ながら、今までのぞいた事もなかった汚い路地の地下にあるスタジオに集まったのは、フランス人、オーストラリア人、インド人、メキシコ人、アメリカはジョージア州出身、そして日本人の私。求められていたのは日本語訛だけでなく「多様性」だったようで、(ジョージア州出身の人はアメリカ南部のアクセント)、実は某大手製薬会社のCMのナレーション録音でした。
まずは先に収録したCMのビデオを全員で鑑賞。不景気のイメージ、競技場でアスリートが倒れるショット、山の頂にクライマーが到達するシーン、製薬工場での製造ラインの映像、笑顔の病人や顧客、活き活きと働く人々、といった流れ。
渡されたスクリプトは全員同じ。要は、この不景気の中、我々の供給戦略は一時つまずきを見せたが、今後は問題を解決しさらなるチャレンジをし続ける。再建を誓い、更なる顧客ニーズに答える姿をアピールしようというものでした。
個別にガラス張りの防音室に呼ばれ、ヘッドホンをし、ミュージックビデオなどで見る丸い網が張ってあるマイクの前に立ち、録音スタート。
That's the business we're in. That's how we manufacture success.
We're committed to delivering on time. All the time. Every time.
The world expects it. And together we will deliver what we promise.
(一部抜粋)
なんのこっちゃという感じもしましたが、錆び付いていた、かつて大学時代演劇サークルにいた日々と思い出しながら、情感たっぷりに下手な英語を読み上げたところクライアントは大満足。私の収録は10分程度で終了。
待機していた時間の方が長く、他の5人と雑談をしながらコーヒーを飲み、2時間半くらいだらだらしてしまいました。他の”声優”たちもなかなかの個性派ぞろいで、ソプラノ歌手、会社経営者、通訳、ファイナンシャルプランナー、IT関係と実に様々。そして皆英語が上手い(オーストラリア人とジョージア州出身は当たり前ですが)。こんなに外国人でありながら、アメリカという地で逞しく生きている人がいるのだから、私ももっともっと頑張らんとアカンねえと、久しぶりに気合いが入りました。
「多様性」を訛のある言葉で表現する。「多様性」をアピールすることで、親近感を持ってもらう戦略に出る。アメリカならではの発想ですね。顔はいっさい出ませんし、どの部分が使われるのか全く分かりませんが、オンエアが楽しみです。多分、日本で流れることはないと思いますが。
2009年7月16日木曜日
2009年7月10日金曜日
砂の女
その昔、そう高校生くらいの時だったかしら、父の書斎から引っ張りだして読んだフリをしたきりでした。安部公房の「砂の女」。
ただページを最初から最後までめくったという事実が欲しかっただけなのかもしれません。「不条理」とは何ぞやと格好つけてみても、条理すら知らない小娘に分かる訳がなく、蜃気楼のようにぼんやりとあらすじは浮かぶものの、結局何も分からなかったのですね。一度読んで、棚にしまって、それきりでしたわ。
「テシガハラ・ヒロシの映画が好きなんだ。特に『Woman in the Dunes』が」
「Woman in the Dunes?」
「日本語で『スナノオンナ』って言うんでしょう」
とあなたに言われるまで、「スナノオンナ」こと「砂の女」が、テシガハラ・ヒロシこと「勅使河原宏」という監督により映画化されていたことを知りませんでした。いえ、それどころかこの小説を思い出す事すらなかったのです。
「君と一緒にその映画を観たい」
とあなたに言われ、「いいよ」と生返事をしたまま約束を数ヶ月反故にしていたのですが、ついに昨日、観てしまいました。そう観てしまったのです。あなたと一緒に。その恐ろしさを知らないまま。
武満徹の闇を切り裂くような旋律。
モノクロ画面で接写される砂、女の肌、砂、虫、砂、男の背中、砂、髪、砂、水、そして砂、砂、砂。
こんなにざらりとした質感のある映画は初めてでした。今のわたしに心というものがあるのであれば、心の表面はこうなっているのかもしれない。心のひだに入り込んだ砂が、ぎしぎしと溢れ出し砂丘をつくる。そして蟻地獄のように、今度はその中に感情が引きずり込まれ蠢き、もがき、結局のところ安住してしまう。
決して鍵カッコつきの「不条理」の標本なんかではなく、それは、そのまま我々人間の生々しいまでもの這うような生き様なのではないか、と気がついた時には、もう遅かった。
わたしも、そこにいたのです。
そう、その砂の中に。
岸田今日子さんの半開きの唇が脳裏に焼き付いて離れません。ホラー映画よりも怖い。それは外的な恐怖ではなく、この肉体に巣食い、魂を支配する地獄だからではないでしょうか。
なぜあなたはこの作品を愛するのでしょう。
私はその砂の中にあなたを見なかった。
私自身を俯瞰する視点はくれたけれども。
ただページを最初から最後までめくったという事実が欲しかっただけなのかもしれません。「不条理」とは何ぞやと格好つけてみても、条理すら知らない小娘に分かる訳がなく、蜃気楼のようにぼんやりとあらすじは浮かぶものの、結局何も分からなかったのですね。一度読んで、棚にしまって、それきりでしたわ。
「テシガハラ・ヒロシの映画が好きなんだ。特に『Woman in the Dunes』が」
「Woman in the Dunes?」
「日本語で『スナノオンナ』って言うんでしょう」
とあなたに言われるまで、「スナノオンナ」こと「砂の女」が、テシガハラ・ヒロシこと「勅使河原宏」という監督により映画化されていたことを知りませんでした。いえ、それどころかこの小説を思い出す事すらなかったのです。
「君と一緒にその映画を観たい」
とあなたに言われ、「いいよ」と生返事をしたまま約束を数ヶ月反故にしていたのですが、ついに昨日、観てしまいました。そう観てしまったのです。あなたと一緒に。その恐ろしさを知らないまま。
武満徹の闇を切り裂くような旋律。
モノクロ画面で接写される砂、女の肌、砂、虫、砂、男の背中、砂、髪、砂、水、そして砂、砂、砂。
こんなにざらりとした質感のある映画は初めてでした。今のわたしに心というものがあるのであれば、心の表面はこうなっているのかもしれない。心のひだに入り込んだ砂が、ぎしぎしと溢れ出し砂丘をつくる。そして蟻地獄のように、今度はその中に感情が引きずり込まれ蠢き、もがき、結局のところ安住してしまう。
決して鍵カッコつきの「不条理」の標本なんかではなく、それは、そのまま我々人間の生々しいまでもの這うような生き様なのではないか、と気がついた時には、もう遅かった。
わたしも、そこにいたのです。
そう、その砂の中に。
岸田今日子さんの半開きの唇が脳裏に焼き付いて離れません。ホラー映画よりも怖い。それは外的な恐怖ではなく、この肉体に巣食い、魂を支配する地獄だからではないでしょうか。
なぜあなたはこの作品を愛するのでしょう。
私はその砂の中にあなたを見なかった。
私自身を俯瞰する視点はくれたけれども。
病院にて、其の三
もう病院について書くのも終わりにしたいのですが、あまりにも想像を絶する日々なので。
もう実名を出しますと、Hahnemann University Hospitalです。ここ数週間私を悩ませているのは。どうしてもそこでしか精密検査を引き受けてくれないというので、嫌々行ってきました。
センターシティーの北の外れ。もう少し行くと治安がどんどんと悪くなる境界線のあたり。癌、耳鼻科、消化器系、高齢者医療、心臓病などなど、広範囲のサービスを提供する巨大病院で、病棟は新しく非常に立派。外見だけはねえ。
受付にたどり着くと、クジャクの羽のような色でまぶたを染めあげた、ニューハーフにしか見えない黒人のオバサンが、退屈そうに長い真っ赤な爪をいじっているではありませんか。彼女は座っているだけで、特に仕事をする気はないようで、背後から同僚が彼女の前の机の資料を取りにきた時には、椅子をずらすそぶりさえ見せません。
ようやく別の牛のような体型の黒人のオバサンが、ゴールドのド派手なアクセサリーをじゃらじゃら揺らしながらのっそりと現れ、私の名前を確認。なんどもこっちがファーストネームで、こっちがファミリーネームだと言うのに、すぐ混乱する。スペルも3回は確認。
そしてベンチで待つように言われ、しばし壁にかかったテレビでCNNのニュースを見つめる。マイケル・ジャクソンのニュースはもういいよ。不安はどんどんと募っていきます。私以外の患者は、全員似たような、安物の服を着た肥満体型の黒人ばかり。病院ですから仕方がないのでしょうが、みな無気力な惚けた顔で空虚を見つめています。
再度受付から呼ばれ、4番のブースに来いと。そこには先ほどのゴールドのアクセサリー、と短髪の白髪で覆われた先輩格の黒人のオバサンが待っており、にっこりと自己紹介。いまから患者登録をするからね、と。これがヒドかった。彼ら、私の個人情報を登録するだけで30分もかかったのです。ものすごーーーいいとろとろと、あーでもない、こーでもない、と言いながら、キーボードを指一本でカチャッ………カチャッ……、カチャッ……あっ間違えたわ、アハハハハ………とやっているのです。
「仕事はてきぱきと」とか「お待たせして申し訳ない」とか、そういった発想がいっさいないのです。そんなに時間がかかるんだったら、こっちが代わりに入力してあげたいと思うくらい。Lazy(怠惰)と言う以外、言葉が見つからない。
プリントアウトした書類を取りにいく動作もゾウガメのごとく、鈍い。気が遠くなりそうでした。時計を見たり、ため息をついたり、朝食抜きで来ているからお腹が空いたわと言って、プレッシャーをかけようしても、全く効果なし。悠然と微笑まれ、逆に気圧されしてしまいます。
なぜこんな仕事ぶりで給料がもらえるのだろう? 責任感なく、だ〜らだ〜らやっているから、私の予約の電話も無視したり、たらい回しにしたり、途中でメンドクサイと思って留守番電話につなげて逃げたりしたんだわと、怒りがグツグツと沸いてきて、頭から蒸気がシュポーっと出て汽笛が鳴りそう。やれるものだったらやってみたかったわ、スチーム係長みたいに。
検査そのものはスムーズに進み問題なかったのですが、(問題があるかどうかは結果の方ですね)それに至るまでの過程がもう…。結局病院に拘束された時間は2時間半。そのほとんどが待ち時間でした。
この日、やっと食事を口にできたのは午後5時半。その足でチャイナタウンのNan Zhou Hand-Drawn Noodle Houseへ直行し、ピーナッツソースの手打ち面3ドル、ワンタンスープ2ドルを、中国語の飛び交う、小汚い食堂でかき込みました。ここは安くて味も確か。オススメです。
もう実名を出しますと、Hahnemann University Hospitalです。ここ数週間私を悩ませているのは。どうしてもそこでしか精密検査を引き受けてくれないというので、嫌々行ってきました。
センターシティーの北の外れ。もう少し行くと治安がどんどんと悪くなる境界線のあたり。癌、耳鼻科、消化器系、高齢者医療、心臓病などなど、広範囲のサービスを提供する巨大病院で、病棟は新しく非常に立派。外見だけはねえ。
受付にたどり着くと、クジャクの羽のような色でまぶたを染めあげた、ニューハーフにしか見えない黒人のオバサンが、退屈そうに長い真っ赤な爪をいじっているではありませんか。彼女は座っているだけで、特に仕事をする気はないようで、背後から同僚が彼女の前の机の資料を取りにきた時には、椅子をずらすそぶりさえ見せません。
ようやく別の牛のような体型の黒人のオバサンが、ゴールドのド派手なアクセサリーをじゃらじゃら揺らしながらのっそりと現れ、私の名前を確認。なんどもこっちがファーストネームで、こっちがファミリーネームだと言うのに、すぐ混乱する。スペルも3回は確認。
そしてベンチで待つように言われ、しばし壁にかかったテレビでCNNのニュースを見つめる。マイケル・ジャクソンのニュースはもういいよ。不安はどんどんと募っていきます。私以外の患者は、全員似たような、安物の服を着た肥満体型の黒人ばかり。病院ですから仕方がないのでしょうが、みな無気力な惚けた顔で空虚を見つめています。
再度受付から呼ばれ、4番のブースに来いと。そこには先ほどのゴールドのアクセサリー、と短髪の白髪で覆われた先輩格の黒人のオバサンが待っており、にっこりと自己紹介。いまから患者登録をするからね、と。これがヒドかった。彼ら、私の個人情報を登録するだけで30分もかかったのです。ものすごーーーいいとろとろと、あーでもない、こーでもない、と言いながら、キーボードを指一本でカチャッ………カチャッ……、カチャッ……あっ間違えたわ、アハハハハ………とやっているのです。
「仕事はてきぱきと」とか「お待たせして申し訳ない」とか、そういった発想がいっさいないのです。そんなに時間がかかるんだったら、こっちが代わりに入力してあげたいと思うくらい。Lazy(怠惰)と言う以外、言葉が見つからない。
プリントアウトした書類を取りにいく動作もゾウガメのごとく、鈍い。気が遠くなりそうでした。時計を見たり、ため息をついたり、朝食抜きで来ているからお腹が空いたわと言って、プレッシャーをかけようしても、全く効果なし。悠然と微笑まれ、逆に気圧されしてしまいます。
なぜこんな仕事ぶりで給料がもらえるのだろう? 責任感なく、だ〜らだ〜らやっているから、私の予約の電話も無視したり、たらい回しにしたり、途中でメンドクサイと思って留守番電話につなげて逃げたりしたんだわと、怒りがグツグツと沸いてきて、頭から蒸気がシュポーっと出て汽笛が鳴りそう。やれるものだったらやってみたかったわ、スチーム係長みたいに。
検査そのものはスムーズに進み問題なかったのですが、(問題があるかどうかは結果の方ですね)それに至るまでの過程がもう…。結局病院に拘束された時間は2時間半。そのほとんどが待ち時間でした。
この日、やっと食事を口にできたのは午後5時半。その足でチャイナタウンのNan Zhou Hand-Drawn Noodle Houseへ直行し、ピーナッツソースの手打ち面3ドル、ワンタンスープ2ドルを、中国語の飛び交う、小汚い食堂でかき込みました。ここは安くて味も確か。オススメです。
2009年7月7日火曜日
病院にて、其の二
精密検査のため訪れたJ病院。今回は万全を期して臨んだつもりでした。はい、英語素人は口を出しますまい。不備がないよう電話予約からしっかりネイティブの友人にまかせ(こういうのを依存といいます)、検査に時間がかかっても良いよう半休をとって付き添ってもらい(こういうのをワガママと言います)、眩しい日差しの下をてくてく、朝食抜きのためクラクラ。不安でドキドキ。
ええ、受付の女性は笑顔で迎えてくれましたとも。服用している薬はないか、最近の体調はどうかなど、笑顔を交えた丁寧な対応にホッ。とする間もなく、別の職員がつかつかと近寄ってきて言うではありませんか。
「あなたの保険プランはうちの病院は受け付けられないの」
「えっ!!予約の段階で確認したよね。大丈夫って言ったじゃない」
「この保険会社自体はいいんだけど、あなたの加入しているプランは特別で、あなたが最初に指定したHという病院以外はだめなの」
なんだとぉぉぉぉぉぉ(怒)
確かに保険加入時に、ホームドクターを決める必要があり、我が家からちょっと歩いたところにあるHを指定しました。そう、例の予約の電話をたらい回しにしたのち、留守番電話に繋がり、そしてメッセージを2件も残したのにかけ直してこなかった、あの病院です。そこで完全なる無視を決め込まれたため、近所のドクターを探して行き、精密検査が必要だから大病院へ行けといわれ、Jまではるばる来たのに、これではまた振り出しじゃない!Hの怨念だ…。でも近所のドクターでは保険が適応されたのに、なぜ大病院で検査となると受け付けてもらえなくなるのかさっぱり分かりません。
いくらごねてもダメなものはダメ。最初から契約をしっかり確認しないこちらが悪いのですが、半休を取ってまで付き添ってくれた友人に申し訳なくて"I'm sorry"を連発。友人は「あなたが悪い訳じゃないよ」と、すぐにH病院に予約の電話をかけてくれましたが、また同じ悪夢が。電話のたらい回し、途中まで予約内容を聞いていたはずの担当者が電話口から消え、数分に渡る保留音の後また別の人がでてくるなど、イライラが募ります。
15分くらいかけて、ようやくH病院の予約が取れましたが、今度はカルテをそちらに再送してもらうため、最初に訪れた病院へまた電話。何で一カ所でこんなことがさっさと済まないのだろう?辛かった諸々の症状は消え、すっかり元気になってきたので、もう精密検査など受けたくないのですが、ここまで来て引き下がる訳にも行かず、逆に疲弊しきってきました。事が全て解決したら、H病院をさっさと担当医から外してしまうつもりです。でもこれがもっと重い病だったらどうするのでしょう?待ちくたびれている間に症状が悪化するに違いありません。
最近、オバマの医療制度改革について調べていたのですが、こう我が身に降り掛かっていると、状況の深刻さと改革に一刻の猶予もないことが痛いほど分かります。私はまだ保険に加入できているから良いようなもので、この国の無保険者はこの8年で690万人増えて4,570万人となっており、うち800万人が児童、8割が勤労者世帯。過去1年間に何らかの形で保障を失った者は6000万人に上っています。日本のような皆保険制度がないため、民間の保険に入るか、加入していたも保険でカバーされる範囲が限定的なため、自己負担分の高額の医療費は家計を圧迫し(GDP比16%。2017年には20%弱に達する)、借金漬けとなるため個人破産の半分以上の原因となっているのです。加えて、医療過誤も多いし、予防と公衆衛生への投資不足も深刻だし、先進国とは言えない状況。いったい前大統領は戦争ばかりして、金持ち優遇税制で彼らに甘い汁を吸わせ、ホント何をしてきたのでしょう。
President Obama is committed to enacting comprehensive health reform this year that lowers costs, guarantees choice of doctors and plans, and assures quality affordable health care for all Americans.
そうだオバマよ、そして議会よ、是非結果を見せてくれ!!
Not only for Americans but also for foreigners like me....
皆保険制度は素晴らしいです。共産主義的だと言われようと、何だろうと素晴らしいシステムです。
ええ、受付の女性は笑顔で迎えてくれましたとも。服用している薬はないか、最近の体調はどうかなど、笑顔を交えた丁寧な対応にホッ。とする間もなく、別の職員がつかつかと近寄ってきて言うではありませんか。
「あなたの保険プランはうちの病院は受け付けられないの」
「えっ!!予約の段階で確認したよね。大丈夫って言ったじゃない」
「この保険会社自体はいいんだけど、あなたの加入しているプランは特別で、あなたが最初に指定したHという病院以外はだめなの」
なんだとぉぉぉぉぉぉ(怒)
確かに保険加入時に、ホームドクターを決める必要があり、我が家からちょっと歩いたところにあるHを指定しました。そう、例の予約の電話をたらい回しにしたのち、留守番電話に繋がり、そしてメッセージを2件も残したのにかけ直してこなかった、あの病院です。そこで完全なる無視を決め込まれたため、近所のドクターを探して行き、精密検査が必要だから大病院へ行けといわれ、Jまではるばる来たのに、これではまた振り出しじゃない!Hの怨念だ…。でも近所のドクターでは保険が適応されたのに、なぜ大病院で検査となると受け付けてもらえなくなるのかさっぱり分かりません。
いくらごねてもダメなものはダメ。最初から契約をしっかり確認しないこちらが悪いのですが、半休を取ってまで付き添ってくれた友人に申し訳なくて"I'm sorry"を連発。友人は「あなたが悪い訳じゃないよ」と、すぐにH病院に予約の電話をかけてくれましたが、また同じ悪夢が。電話のたらい回し、途中まで予約内容を聞いていたはずの担当者が電話口から消え、数分に渡る保留音の後また別の人がでてくるなど、イライラが募ります。
15分くらいかけて、ようやくH病院の予約が取れましたが、今度はカルテをそちらに再送してもらうため、最初に訪れた病院へまた電話。何で一カ所でこんなことがさっさと済まないのだろう?辛かった諸々の症状は消え、すっかり元気になってきたので、もう精密検査など受けたくないのですが、ここまで来て引き下がる訳にも行かず、逆に疲弊しきってきました。事が全て解決したら、H病院をさっさと担当医から外してしまうつもりです。でもこれがもっと重い病だったらどうするのでしょう?待ちくたびれている間に症状が悪化するに違いありません。
最近、オバマの医療制度改革について調べていたのですが、こう我が身に降り掛かっていると、状況の深刻さと改革に一刻の猶予もないことが痛いほど分かります。私はまだ保険に加入できているから良いようなもので、この国の無保険者はこの8年で690万人増えて4,570万人となっており、うち800万人が児童、8割が勤労者世帯。過去1年間に何らかの形で保障を失った者は6000万人に上っています。日本のような皆保険制度がないため、民間の保険に入るか、加入していたも保険でカバーされる範囲が限定的なため、自己負担分の高額の医療費は家計を圧迫し(GDP比16%。2017年には20%弱に達する)、借金漬けとなるため個人破産の半分以上の原因となっているのです。加えて、医療過誤も多いし、予防と公衆衛生への投資不足も深刻だし、先進国とは言えない状況。いったい前大統領は戦争ばかりして、金持ち優遇税制で彼らに甘い汁を吸わせ、ホント何をしてきたのでしょう。
President Obama is committed to enacting comprehensive health reform this year that lowers costs, guarantees choice of doctors and plans, and assures quality affordable health care for all Americans.
そうだオバマよ、そして議会よ、是非結果を見せてくれ!!
Not only for Americans but also for foreigners like me....
皆保険制度は素晴らしいです。共産主義的だと言われようと、何だろうと素晴らしいシステムです。
2009年7月2日木曜日
病院にて
やっと病院へ行く事ができた。友人たちにおんぶに抱っこで、予約入れから当日の付き添いまで(仕事を抜けてきてくれた2人に深く深く感謝)全部頼み、迷惑をかけっぱなしで反省。そうか、日本を離れると病院へいくことも大冒険になってしまうのねと渡米1年8ケ月も過ぎたころ、また何もできないことに気がつき、がっくり、しょんぼり、ため息、自己嫌悪。
診察前に記入する書類に一時間も費やしてしまい、後からきた人にどんどんと抜かれていく。焦れば焦るほど、書類の文字が踊りだし、もう気分はチャイム5分前の高校の英語の試験。現在の症状から日頃の生活習慣まで、あれこれ答えないといけないのだが、そのなかに「マリファナやコカインを常用しているか?」という質問項目には驚く。さすがアメリカ。あとなぜか「毛」に関する質問も多く「顔に異常なほど毛が生えているか?」というようなものもあり、首を傾げながら「No」にチェック。
何事も初回が大変なのだろうが、診察となるともう緊張でガチガチ。医師の質問にも的確に答えられず、結局前から症状を相談していた友人に診察室まできてもらい、まるで彼の症状を説明しているかのようによどみなく答えてもらうという異常事態に。
血液検査でも注射器を持って現れたでっぷりした黒人の女性看護士を不安な目で見上げてしまう。
「これは決して、決して人種差別ではないのだけれども」
と心の中で繰り返しながら、そのむちむちした不器用そうな指に私の細い血管が拾えるのだろうかと固くなってしまい、結局採血自体は滞りなく済んだのだが、二の腕を圧迫していたゴムチューブが解かれた後も握りしめた拳がしばらく開かなかった。
検査結果は後日報告。さらに大病院で追加の検査を受けなくてはいけないことになってしまったが、でも逆に原因が分からないまま放置しなくてよかったとちょっと安堵。
診察後、付き添ってくれた友人が小怒り気味に
「bipolar disorderって言われたの気がついた?」
どうやら不眠症気味であることや、諸々のストレスで精神的に疲れ気味だという話をしたときに医師に自信たっぷりに告げられたらしい。bipolar disorderとは双極性鬱病。つまりうつ状態のこと。確かに最後に泣いたのはいつかとか聞かれたなあ。
「確かにストレスはあるだろうけど、そんな大それた名前をつけるほどじゃないでしょう?そうやってもっと診察しようとしているんだよ」
いらん。いらん。そんなよけいな病気を見つけないでいただきたい。ドーパミンをコントロールする薬でも処方する気だろう。そんなことでは根本的に問題は解決しないのだよ。医療もビジネス。患者は消費者なのだから賢く医者につきあい、弱気につけ込まれないようにしないと。まったく、病院でも気が休まらない。
診察前に記入する書類に一時間も費やしてしまい、後からきた人にどんどんと抜かれていく。焦れば焦るほど、書類の文字が踊りだし、もう気分はチャイム5分前の高校の英語の試験。現在の症状から日頃の生活習慣まで、あれこれ答えないといけないのだが、そのなかに「マリファナやコカインを常用しているか?」という質問項目には驚く。さすがアメリカ。あとなぜか「毛」に関する質問も多く「顔に異常なほど毛が生えているか?」というようなものもあり、首を傾げながら「No」にチェック。
何事も初回が大変なのだろうが、診察となるともう緊張でガチガチ。医師の質問にも的確に答えられず、結局前から症状を相談していた友人に診察室まできてもらい、まるで彼の症状を説明しているかのようによどみなく答えてもらうという異常事態に。
血液検査でも注射器を持って現れたでっぷりした黒人の女性看護士を不安な目で見上げてしまう。
「これは決して、決して人種差別ではないのだけれども」
と心の中で繰り返しながら、そのむちむちした不器用そうな指に私の細い血管が拾えるのだろうかと固くなってしまい、結局採血自体は滞りなく済んだのだが、二の腕を圧迫していたゴムチューブが解かれた後も握りしめた拳がしばらく開かなかった。
検査結果は後日報告。さらに大病院で追加の検査を受けなくてはいけないことになってしまったが、でも逆に原因が分からないまま放置しなくてよかったとちょっと安堵。
診察後、付き添ってくれた友人が小怒り気味に
「bipolar disorderって言われたの気がついた?」
どうやら不眠症気味であることや、諸々のストレスで精神的に疲れ気味だという話をしたときに医師に自信たっぷりに告げられたらしい。bipolar disorderとは双極性鬱病。つまりうつ状態のこと。確かに最後に泣いたのはいつかとか聞かれたなあ。
「確かにストレスはあるだろうけど、そんな大それた名前をつけるほどじゃないでしょう?そうやってもっと診察しようとしているんだよ」
いらん。いらん。そんなよけいな病気を見つけないでいただきたい。ドーパミンをコントロールする薬でも処方する気だろう。そんなことでは根本的に問題は解決しないのだよ。医療もビジネス。患者は消費者なのだから賢く医者につきあい、弱気につけ込まれないようにしないと。まったく、病院でも気が休まらない。
2009年6月28日日曜日
日本食レストランで働くの巻
諸々の事情はさておき、週2回フィラデルフィア市内の某「日本食レストラン」でウェイトレスのアルバイトを始めました。
面接は10分。名前と電話番号を聞かれ、仕事の経験を聞かれただけ。英語が上手だから大丈夫とインドネシア人に太鼓判を押され、即採用。翌々日から働き始めました。
この日本食レストラン、オーナーは韓国人、私以外の従業員は全てインドネシア人です。聞くところによるとほとんどの日本食レストランが、こういったシステムなのだとか。フィラデルフィアは韓国人経営の店が多いですが、他の街へ行くと中国人か台湾人というケースの方が多いらしい。薄給でも文句を言わず働くのは、観光ビザで入国し、とうに滞在資格が切れている彼らのようなアジア系の不法移民なのですね。
日本食は健康ブームもあってそこそこ人気なのですが、実際に日本人が働いている事は、ニューヨークのような大都市ならいざしらず、フィラデルフィアでは数人ではないでしょうか? いちおう日本食を前面に出している以上、アジア系の顔で従業員を揃えるのが常識のようで、西洋系、黒人、メキシカンが働いていることはほぼありません。
インドネシア訛の英語に悪戦苦闘し、ベテランのインドネシア人ウェイトレスに「また、あんた味噌汁にスプーンをつけ忘れたでしょう!」と叱られ、「ハマチはイエローテイル、鯛はレッドスナッパー」と呪文のように唱えながら働いております。
このレストランの場合チップはサービスをしたテーブルごとではなく、その日のトータルを勤務歴や経験に合わせた割合で分配。ちなみに私の初日給は6時間働いて$23でした。その次は$28。一番賑わう金曜日の夜だと$60くらいまではいきますが、平均すると$40前後でしょうか。毎回現金とっ払い。時給自体は2ドルちょっとなので数ヶ月分まとめてあげるよとのこと。
うーん、我々労働者階級は搾取されておるぞと、マルクスの「資本論」でも読みたくなる日々です。ただ、初の英語しか通じない職場。自意識や、変なプライドや、迷いを全て断ち切り、人生再出発です。
面接は10分。名前と電話番号を聞かれ、仕事の経験を聞かれただけ。英語が上手だから大丈夫とインドネシア人に太鼓判を押され、即採用。翌々日から働き始めました。
この日本食レストラン、オーナーは韓国人、私以外の従業員は全てインドネシア人です。聞くところによるとほとんどの日本食レストランが、こういったシステムなのだとか。フィラデルフィアは韓国人経営の店が多いですが、他の街へ行くと中国人か台湾人というケースの方が多いらしい。薄給でも文句を言わず働くのは、観光ビザで入国し、とうに滞在資格が切れている彼らのようなアジア系の不法移民なのですね。
日本食は健康ブームもあってそこそこ人気なのですが、実際に日本人が働いている事は、ニューヨークのような大都市ならいざしらず、フィラデルフィアでは数人ではないでしょうか? いちおう日本食を前面に出している以上、アジア系の顔で従業員を揃えるのが常識のようで、西洋系、黒人、メキシカンが働いていることはほぼありません。
インドネシア訛の英語に悪戦苦闘し、ベテランのインドネシア人ウェイトレスに「また、あんた味噌汁にスプーンをつけ忘れたでしょう!」と叱られ、「ハマチはイエローテイル、鯛はレッドスナッパー」と呪文のように唱えながら働いております。
このレストランの場合チップはサービスをしたテーブルごとではなく、その日のトータルを勤務歴や経験に合わせた割合で分配。ちなみに私の初日給は6時間働いて$23でした。その次は$28。一番賑わう金曜日の夜だと$60くらいまではいきますが、平均すると$40前後でしょうか。毎回現金とっ払い。時給自体は2ドルちょっとなので数ヶ月分まとめてあげるよとのこと。
うーん、我々労働者階級は搾取されておるぞと、マルクスの「資本論」でも読みたくなる日々です。ただ、初の英語しか通じない職場。自意識や、変なプライドや、迷いを全て断ち切り、人生再出発です。
2009年6月5日金曜日
日本人の心
日本人は何かと「心」を大切にします。特に「和の心」とか「侘び寂び」と言うと、茶の湯、茶室、懐石料理、うつろいゆく四季折々の風景など、総括できない何か独特の世界が想像されます。文学を通して、また単純化されたコマーシャリズムの戦略に乗って、なんとなくそのイメージは掴めているつもりでも、その「心」の神髄を知っているのかと聞かれると、少なくとも私は胸を張っては頷けません。
先日散歩中に、小径に面したささやかなガーデンの前を通りました。ツタが這ったアーチの下に、アンティーク調のラウンドテーブルや椅子が置かれ、アフタヌーンティーでも嗜みたくなる素敵な空間。でもちょっと庭木の枝葉や雑草が元気に伸びすぎて、「うっそうとしている」の一歩手前の感じ。
「もう少し手入れをしたほうが良いわね」と連れのアメリカ人に言ったところ、千利休と秀吉の話を知っているかと聞かれました。
「千利休が秀吉を茶会に呼んだ時、弟子が庭を落ち葉一つなくきれいに掃除してしまったんだ。それをみた利休が慌てて落ち葉を撒いて元に戻したんだよ」
このエピソードが詳細に渡り史実に即したものなのかどうかは、私には分かりません。ただその瞬間、雷にでも打たれたような衝撃が体を駆け巡りました。このセリフ、言う側と聞く側が明らかに逆転している。そしてこのタイミングでそのエピソードがさらりと言えるあなた、まだ23歳なのに…。
彼が大学でイースト・アジア研究を専攻し、日本文化に造詣が深いことは知っていましたが、その神髄を生ける肉体として受け止め、言葉に溶かして己の生きる空間を作っていく。簡単に言ってしまうと、私よりずっと日本人らしかったのです。恐れ入りました。
ちなみに彼の愛読書は谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と、岡倉 天心(覚三)が英語で書いた『The Book of Tea』(茶の本)と、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』だそうです。
先日散歩中に、小径に面したささやかなガーデンの前を通りました。ツタが這ったアーチの下に、アンティーク調のラウンドテーブルや椅子が置かれ、アフタヌーンティーでも嗜みたくなる素敵な空間。でもちょっと庭木の枝葉や雑草が元気に伸びすぎて、「うっそうとしている」の一歩手前の感じ。
「もう少し手入れをしたほうが良いわね」と連れのアメリカ人に言ったところ、千利休と秀吉の話を知っているかと聞かれました。
「千利休が秀吉を茶会に呼んだ時、弟子が庭を落ち葉一つなくきれいに掃除してしまったんだ。それをみた利休が慌てて落ち葉を撒いて元に戻したんだよ」
このエピソードが詳細に渡り史実に即したものなのかどうかは、私には分かりません。ただその瞬間、雷にでも打たれたような衝撃が体を駆け巡りました。このセリフ、言う側と聞く側が明らかに逆転している。そしてこのタイミングでそのエピソードがさらりと言えるあなた、まだ23歳なのに…。
彼が大学でイースト・アジア研究を専攻し、日本文化に造詣が深いことは知っていましたが、その神髄を生ける肉体として受け止め、言葉に溶かして己の生きる空間を作っていく。簡単に言ってしまうと、私よりずっと日本人らしかったのです。恐れ入りました。
ちなみに彼の愛読書は谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と、岡倉 天心(覚三)が英語で書いた『The Book of Tea』(茶の本)と、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』だそうです。
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